カレッジマネジメント189号
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40世の中の関心はMOOCsから静かに遠のき、オンライン教育などを活用しながら大学の授業を改善する方向に動いているようだ。大学の教育を社会にアピールできるという魅力は依然としてあるから、引き続きMOOCsを製作している大学はあるが、これに乗り遅れると大変といった切迫感は以前ほどは感じられなくなった。アメリカの高等教育系のメルマガも、最近はMOOCsの記事は数えるほどしかない。アメリカでは高等教育財政の逼迫と授業料の高騰が社会問題化していることを背景に、大学が学外者を主に教育するMOOCsに莫大な投資をしていることについて学生から批判があり、これを契機にMOOCsやその他オンライン教育モジュールを用い、反転授業等を通じて学内の教育の改善に役立てるという動きが鮮明となった。国内においても、中教審答申において「主体的に考える力を有する人材」を育成することが求められたこともあって、反転授業にチャレンジしたり、これを検討したりする大学が増えてきた。実際、筆者のところにも昨年度はMOOCs関連の依頼が多かったが、今年度に入って反転授業やブレンド型学習、主体的学びについての講演や執筆依頼が増えた。MOOCsは背伸びしすぎであっても、反転授業は、「自大学の学生を一人前にして、世の中に送り出さなくてはいけない」という大学の喫緊かつ切実な課題に直接つながる可能性があるという判断であろう。このような反転授業の広がりを念頭に、今回は多様な反転授業の試みを紹介したい。反転授業の方法はまだ確立していない。しかし紹介する事例が示すように、単に「講義」と「宿題」を反転させるというだけでない、多様な広がりと可能性を有している。これら多様な事例がアイデアを膨らませるのに役立つことを期待している。 物理のコンセプトを理解させたい!カリフォルニア大学バークレー校の物理学の授業。教室前方のスクリーンには、図表1に示すような、選択式で解答する物理の問題が投影されている。数分の考える時間が与えられ、学生はクリッカー※でこれに解答する。数式は使わない。直感で解答する。学生の解答が割れれば、目的に応じて多様な反転授業のデザイン船守美穂 東京大学教育企画室 特任准教授リクルート カレッジマネジメント189 / Nov. - Dec. 201421世紀の新たな高等教育形態MOOCs5

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