カレッジマネジメント189号
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47リクルート カレッジマネジメント189 / Nov. - Dec. 2014事業所見学。これが大きな2つの柱となった。いずれも選択科目として始まり、現在は必修となっている。「人事や経営にある程度の経験を積んだ、トップに近い方に、産業界が大卒人材に求めているものについてお話しいただく。ただしそれだけだとたぶん、高校から入ったばかりの学生にとっては雲の上ですから、並行して、本学の卒業生をメインに、現場で活躍している若手の話も聞かせることにしました」事業所見学は、IT企業のような“単なるオフィス”もあるが、雰囲気だけでも直接感じさせることに意義があるという。またこのときも、若い社員に話を聞く。現場で聞く話はやはり実感が違うだろう。最初の頃は10社前後だった協力企業数は、昨年50社近くと順調に増えている。見学は1カ所とは限らず、だいたい1人の学生が2カ所ぐらいに行くという。「見学に行くのは1年生です。事業所の大きさにもよりますけれども20人か30人一組で、教員が同行しますが、大変なのですよ、ケアが。見学前には、必ず大学に集合して、服装チェック。スリッパとか破れたジーパンとかで来る学生がいますから。企業の人たちに自分たちが請うて見学させてもらって、そこから学ぼうとする姿勢を、自分自身の態度で表さないといけない。最初はそういう教育から始まるのです」話は聞きっぱなし、見学は行きっぱなしでは、当然大きな教育効果は得られないので、レポートを出させてチェックするシステムにしているが、これは教員にとって大きな負担となる。そこで、産業界のOBをメインに、ティーチングアシスタントを広く募集した。「1対1とか複数とかでなしに、学生をグループにまとめてやるので、チームティーチングアシスタント、TTAと呼んでいます。TTAは導入初年度で30人ぐらい、今は60人近くいます。学生と同じ講義を聞いたり、事業所見学に同行したりして、TTA同士でお互いアドバイスやディスカッションをしながら、またはアプルーブしながら、レポートチェックをしています」このように電通大のキャリア教育は、産業界の力を借りてスタートした。その経緯や構築されたシステムには、他の大学に比べて産業界OBとの距離が近いことが表れている。「それは本学の有利な点です。もっともっとうまく使わなきゃいけないですね」(福田学長)PBL型の授業の推進「話を聞く」「現場を見る」の次のキャリア教育として始めたのは、課題の解決に向けて議論し、行動し、学ぶという、PBL(Problem Based Learning) 型の授業だ。試行錯誤を経てレベルが上がってきたと福田学長は言う。例えば、3年生の選択科目「エンジニアリングデザイン」は、キャリア教育の一環と位置づけられたPBL授業だが、そこでこんな事例があった。電通大のキャンパスは、都道をはさんで東と西の2つに分かれていて、交通量の多い都道の横断は、教室移動などで非常に危険なルートになっている。大学は、20年ほど前から信号機の設置を警察署に依頼してきたが、すぐ近くに他の信号機があるなどの理由で設置されないままになっていた。「それを学生たちがPBLの課題にして、ものすごい調査をしたんですよね。こういう形で信号機が設置されている事例があるとか、こういうところに適したこういうシステムの信号機があるとか。そしてその調査結果を持って警察署にインタビューデータベース eラーニング (外部講師の講義など) 参加 参加 参加 参加 活用 記録 記録 参加 レポート提出 質問、相談など 学生 コメント返信、 対応、指導など 受講 連携 教員 キャリア教育専門の 教員が指導 事業所見学 1・2年生が企業を訪ね 職業としての仕事や 企業という組織を理解 インターンシップ 夏季休暇などを利用し 主に2・3年生が 約4週間 インターンシップを経験 学年横断教育 1年生と3年生が 同じ教室で学び 学生同士が支援する 学習 ポートフォリオ システム Web上に大学での 学びや経験を蓄積 研究室訪問 1年次から研究室を 訪問して、 自分の興味を自覚し 将来の職業を考える ヒントを得る 学外(社会人)講師 技術者、採用担当者などが 講師となり社会経験・ 大学生活などを テーマにした講義 講義 教員と学外講師による キャリアデザイン支援 グループワーク 少人数で 討論をする授業 キャリア教育 ボランティア (特任講師) 産業界OB、電通大OB などが指導 2013年度 事業所見学の実績 参加人数順全48企業・団体・日立製作所・日本マイクロソフト・NTTドコモ・NEC・富士通・三菱東京UFJ銀行・鉄道総合技術研究所・大日本印刷・グーグル・KDDI研究所・シスコシステムズ・日産自動車・日本航空電子工業・日立国際電気・富士電機・安川電機・NHK ・エフエム東京・特許庁・オービック ビジネスコンサルタント・キヤノン・リコー・日本経済新聞社・村田製作所・新エネルギー・産業技術 総合開発機構(NEDO)・住友電気工業・ソニー      ほか

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