カレッジマネジメント189号
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50大学の地方創生戦略清成忠男事業構想大学院大学学長連 載㊻ 地域における新産業創出と大学政府の地方創生政策が本格的に動き出した。前号では、地方創生における大学の役割について検討した。今回は、具体的な大学の地方創生戦略を取り上げる。戦略の課題1地方の活性化は、地方に立地する大学の存立基盤を強化する。したがって、地方の大学は、地方創生戦略展開の主たる担い手にならなければならない。まず、注目すべきは、流動性の大きい若者の動向である。地方は若者の流出を抑制し、流入を促進する必要がある。困難ではあるが、地方は人口の社会増をはかることが望ましい。問題は、地方の範囲である。ここでは、全国を数カ所に分けた広域的な地方圏を単位として考える。圏域内では、大学は機能分化を進め、ネットワーク化をはかる。各圏域では、大学志願者の東京圏への流出を抑制する。そして、東京圏における大学卒業者のUターンやIターンを促進する。ただ、東京一極集中にはそれなりの理由がある。東京には中枢管理機能が集積されている。多様な知的資源も蓄積されている。その結果、高い付加価値が生み出される。同時に、大量の雇用が創出されている。したがって、大学志願者には、将来における雇用の機会の豊富な東京圏の大学への進学を志向する者が多くなる。地方大学の卒業生も地元に就職の機会が乏しいとなると、東京圏に流出することになる。もちろん、東京には独自の都市文化が存在し、地方の人々を惹きつける。だが、東京には、影の部分も存在する。東京の2013年の合計特殊出生率は、1.13と全国最低の水準にある。仕事優先という状況とともに、子育ての条件が必ずしも整備されていない。少子化は当然の結果である。自然環境という点でも、東京が望ましい状況にあるとはいえない。最近では、若者の価値観は多様化している。若者の東京志向にも変化が見られるのである。地方の大学志願者は、東京の状況をトータルに判断して進学先を決めるはずである。いずれにしても、地方創生は、若者の地方回帰を前提とする。それでは、大学の志願状況は、どのように推移しているのであろうか。志願者地元志向の動向2地元大学への進学希望が強まる傾向にあるという調査がある。リクルート進学総研の調査によると、地元志向の割合は、2009年40.1%、2011年46.5%、2013年49.4%と推移している。ただ、学校基本調査によると、大学入学者の自県内入学率は、2010年に42.0%であったが、2011年41.9%、2012年42.0%、2013年42.3%、2014年42.1%と横リクルート カレッジマネジメント189 / Nov. - Dec. 2014

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