カレッジマネジメント189号
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51ばいに推移している。こうした数値から見る限り、地元進学は必ずしも強まっていない。また、入学者総数に占める東京圏入学者の比率は、2004年には40.3%であったが、2009年41.3%、2013年41.1%、2014年41.6%と推移している。東京圏一極集中が強まっているわけではない。志願者の流動性は落ち着いているといえよう。それにしても、大学入学者はすでに大都市圏に集中し過ぎている。前述したように、2014年には入学者の41.6%を東京圏が占めているが、人口の集中度は29.8%に止まっている。東京圏に愛知県及び関西圏(京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)を加えた3大都市圏には、入学者の67.3%が集中しており、人口の51.4%を大きく上回っている。今後のあるべき国土構造に配慮すると、地方分散をはかるべきだという見解が成り立つ。ただ、地方分散は、地方創生の成否に依存する。地方創生の課題は、地方における産業の創出である。地方の雇用の機会が拡大すれば、大学入学者の地元志向が強まるはずである。ただ、入学者の地元志向には、大きな地域差がある。まず、この点を確認しておこう。表1は、都道府県別に地元進学率の推移を見たものである。地元進学率の高い地域と低い地域を対比してある。地元進学率の高い地域であるが、それぞれ事情はやや異なる。3大都市圏に属しているのは、半数の5都府県である。地元に大学が集積されており、地元志向が強い。これらの地域では、大学等進学率が高い。また、福岡県と広島県は、3大都市圏に次ぐ地方拠点である。やはり大学の集積が厚く、地元進学率が高い。これに対して、北海道と沖縄は、地元流出のコストが高く、もともと地元進学率が高い。なお、7都府県において、地元進学率が上昇している。他方、地元進学率の低い県であるが、やはりそれぞれ事情がある。多くの大学が集積している大都市に隣接しているため志願者の流出が著しい和歌山県、佐賀県、岐阜県などが目につく。和歌山県は2014年に地元残留者479人に対して、大阪府への流出者は1835人に達する。佐賀県は地元残留者527人に対して福岡県への流出者1390人、岐阜県は地元残留者1793人に対して愛知県への流出者4535人という状況にある。福島県は地元残留者1519人に対して東京への流出者1674人、山形県は地元残留者と宮城県への流出者が同数、鳥取県は関西に流出、島根県は岡山県と広島県に流出、香川県は関西と岡山県に流出、長崎県と宮崎県は福岡県への流出、といった状況が見られる。いずれも、地元における雇用の場の不足が影響している。また、表1によって明らかなことは、地元進学率が高い地域においては大学等進学率の高い地域が多い。逆に地元進学率の低い地域においては総じて大学等進学率が低い。所得水準を向上させ、大学等進学率が上昇すれば、地元に多くの大学が成り立つようになる。結果として、地元進学率が上昇する。大学の戦略的対応の方向3わが国の地方分権・分散を考慮すると、広域圏としての創生が現実的であろう。この場合、中枢拠点都市の強化と各県の底上げをベースにすることが不可欠である。地方創生の鍵は、新産業の創出である。新産業は所得効果と雇用効果をもたらすとともに、域際収支をプラスにし経済自立に貢献する。所得水準の上昇は大学進学率をリクルート カレッジマネジメント189 / Nov. - Dec. 2014資料:文部科学省「学校基本調査」(注)進学率は大学等進学率(%)2014年の( )内は大学等進学率(%)地元進学率の高い地域地元進学率の低い地域地域2004年2014年地域2004年2014年1愛知69.970.6(58.5)和歌山8.310.8(49.4)2北海道71.068.4(41.3)鳥取12.511.1(41.8)3東京58.464.6(66.1)佐賀15.515.1(42.0)4福岡62.463.5(53.1)長崎15.815.4(43.5)5大阪51.254.8(58.3)島根11.615.7(47.1)6沖縄57.253.8(37.7)香川16.716.7(51.8)7広島48.153.1(59.9)宮崎21.118.2(43.5)8京都47.149.8(65.6)岐阜15.518.8(55.5)9熊本47.645.5(45.1)山形17.818.9(44.7)10兵庫42.645.0(59.9)福島19.619.3(44.3)表1 都道府県別地元進学率の推移

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