カレッジマネジメント189号
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ではなく看護界の課題を模索し拡げていく視座、あらゆる思考力が伴わなければ、実践力は育たない」。だからゼミ形式の授業や京都市とコラボした教育にも力を入れる。「これからの社会に期待される看護を突き詰めていくと必然的にグローバルになる」と、1年次の英語・中国語を軸にしたコミュニケーション論に始まり、4年次にはドイツ・スイスの代替療法を現地で学ぶ国際看護論実習という選択科目もある。年次が上がるにつれ視座を上げ、最終的には医学複合領域へ拡げていく万全のカリキュラムを設計した。キャンパスは短大時代より敷地を拡張し、市立病院とも隣接しているが、他にも実習病院は平均30分以内という立地条件も自慢。これも地域や人的ネットワークのつながりの1つの顕れだ。校舎は3階建てで1階には事務局や地域交流の場があり、2階以上が教室。様々な講義形態に対応できるよう、大中小の教室を全16室備える。通常実習とは別の高度な医療機器の設置された「スキルスラボ」は壁がスケルトンになっており、廊下からでも機器を目にすることができるが、これは高度医療機器も日頃から見慣れておくことが大事だという意見からだ。先生の研究室も扉から中が見える作りのため交流が生まれやすいなど、随所に学生が一歩踏み出しやすい工夫が見られる。さて学長の言う「楔型教育」を最も体現しているのが「看護の智協働開発センター」だろう。学内に設置され、学生・教員のほか、看護職者・市民・企業などが学び合いこれからの看護の発展を志す場だ。看護を一番わかっているのは患者で、市民にこそ教えを請うべきことは多い。大学が教えるのではなく、フラットに議論を重ね、理論と臨床のギャップを埋めつつ、人々の生活に寄り添う看護の新しい姿を模索する。「社会ニーズの変化に対応する新たな智や仕組みを、柔軟に生み出していきたい」と話す学長の表情は明るく、活力に満ちていた。(本誌 鹿島 梓)2014年4月、58年の歴史を持つ京都市立看護短期大学の伝統と教育資源を継承し、京都看護大学が開学した。3年制の公立短大が私立四大へ変化する背景には、これから迎える少子高齢多死社会における看護の役割の拡大があったという。医療界では常識である2025年問題(日本人の4人に1人は75歳以上の超高齢社会)を控え、医療は病院完結型から地域完結型への変換が叫ばれている。看護師自身も高い技術力と確かな知識で医療関係者を統括する役割に加え、患者の人生設計に一層寄り添う高い視座が求められる。こうした背景を受け「これからの医療現場に必要なスキルやスタンスを身につけるためには、どうしても看護師教育に特化した4年間が必要でした」と豊田久美子学長は語る。そのために専門教育を科目ごとにぶつ切りにせず、つなげて拡げていく「楔型教育」にこだわる。「相手に寄り添うスタンスと高い専門性はもちろん、より良い看護のあり方を模索する能動性、現場だけ60リクルート カレッジマネジメント189 / Nov. - Dec. 2014成人看護実習室。壁の色は実習領域により異なる。 オープンな作りのスキルスラボ。

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