カレッジマネジメント190号
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34移は図表2にある通り。一見して分かるように、2000年代後半から志願者数の漸減傾向が続き、2012年には13,000人を割り込むところまで減少していた。しかしこの年を境に今は明確なV字を描いて志願者が増加する傾向に転じている。学生の出身地は兵庫県が6割程度に上る一方、神戸を起点に東からの受験生は必ずしも増えていなかったという。ただ、ポーアイに新学部が設置されたことが奏功してか、昨年は大阪からの受験生が増加したそうだ。効果は、そうした量的な側面にとどまらない。岡田学長は、ポーアイキャンパスの設置を契機に地域社会との連携が目に見えて強まったと感じている。神戸市や兵庫県との関係が密になり、行政から多様な要望が寄せられるようになった。JICA関西本部や神戸空港もあり、社会との連携がしやすいのが強みだ。この結果、大学関係者の意識も変わってきているのを感じると学長はいう。社会全体が学生の活力を期待し、キャンパス外での学びに価値を見いだすようになったことが影響しているのではないかと岡田学長は見ている。新学部設置で期待される波及効果それでは、ここ2年連続で進められている学部設置はどんな効果をもたらしているのだろうか。先に見た通り、新しい学部の設置が受験者増という効果をもたらしているように見える。しかし、岡田学長はそれはあくまで結果であって二次的な目標にすぎないと強調する。むしろ岡田学長が期待するのは、二つの新学部で取り組む教育がもたらす波及効果だ。「現代社会学部」はアクティブラーニングやサービスラーニングを推進する場として構想された。大学で学んだことを地域に出て現場で実践し、また大学に戻ってブラッシュアップする。そんな大学と現場を結ぶ往還が学びを深めていく。そして、来年度から始動する「グローバル・コミュニケーション学部」では、単なる外国語学習を越え、自発的に実践し何かを成し遂げていける力をもったグローバル人材を育成していくことを目指す。アクティブラーニングに、グローバル人材の育成――なるほど、現代における大学教育のトレンドだ。しかし、神戸学院の新学部設置を単にトレンドを追い求めた結果だと考えるのは早計だ。むしろ大学経営という観点から見逃してならないのは、これら新学部設置に「神戸」という強みを活かすという発想が通底している点だろう。岡田学長は「神戸だからこそできる学部・学科の設置を目指した」と述べる。ちょうど20年前に阪神・淡路大震災を経験した国際都市「神戸」。ポートアイランドにキャンパスを構えるようになった大学として、この神戸という地の利を活かした教育を展開することは極めて戦略的だ。例えば、昨春設置された現代社会学部には社会防災学科が置かれ、既に防災を軸に地域社会と連携した学びや活動が展開され始めている。他方、グローバル・コミュニケーション学部には英語コース・中国語コースを設け、3年生前期に半年の留学を全員に義務づけることにしている。英語と中国語をツールとして使いこなせるレベルにまで高め、世界どこに行っても臆せず相手とコミュニケーションし、日本の文化・社会について情報発信できる人材を育成したいという。同学部には同時に日本語コースも設け、留学生数の増加につなげる計画だ。岡田学長は、これら2つの学部で展開する教育手法を起爆剤にして、9学部を有する総合大学としての強みを活かしながら、既存学部の改善や活性化につなげたいと考えている。その意味で、2つの新学部設置は、21世紀に大学が求められている教育を先行的に推進していくための足がかりと位置づけることがでリクルート カレッジマネジメント190 / Jan. - Feb. 2015(年度) (人) 図表2 志願者数の推移(2005-2014年) 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 現代社会学部 総合リハビリ テーション学部 経営学部 人文学部 薬学部 経済学部 法学部 栄養学部 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 1689 1352 1082 835 868 1797 1621 1405 1379 1673 1721 1986 5308 2873 2109 1180 666 17516 1990 1608 3352 2759 1719 1151 13958 1683 1675 2676 2645 1596 1119 12799 1974 2313 2888 2573 2173 1096 14638 2159 1899 3039 2877 1903 1230 14904 2401 2596 2559 2449 2180 1173 14226 2625 2792 2770 2978 2389 1384 15773 2555 2492 2796 2808 2183 1755 15671 2017 2260 3470 2751 1738 2947 16535 2563 2229 4905 2488 1908 1731 17513

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