カレッジマネジメント190号
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58リクルート カレッジマネジメント190 / Jan. - Feb. 2015熊本大学2011年に大学設置基準が改正され、「大学は、生涯を通じた持続的な就業力の育成を目指し、教育課程の内外を通じて社会的・職業的自立に向けた指導等に取り組むこと」が明記され、就業力育成は大学教育の重要な課題となっている。各大学が活動の方向性を模索するなか、地域産業人材の育成や地域経済の活性化にもつながるような就業力育成の取り組みが注目されている。この連載では、産業界との連携や地元自治体との協働によって学生の就業力を高めることに成功している事例などを、積極的に紹介していきたい。今回は、2014年度「スーパーグローバル大学創成支援事業(SGU事業)」「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」に採択された熊本大学で、谷口功学長にお話をうかがった。国際化と地域創生とを一体的に捉えた取り組みは、地方国立大学の目指す教育改革の方向性として注目される。課題は学生のエンカレッジ旧制五高の伝統を持ち、現在も地域のトップ校である熊本大学。谷口功学長は、「うちの学生は高いポテンシャルを持っていて、社会で十分に活躍できる。ただ、東京にいる人たちに比べて自己表現力や積極性がちょっと劣る。関西圏とか東京の学生は自分で自分を売り込むというのをや就業力を育成する連載 ㉑地域創生とグローバル大学へ向けた教育改革るでしょ。武士の社会を基盤とする熊本の文化的な特徴かもしれないけど、あまり自分を売り込むというのを良しとしないのです。そういう特性を捉えて、就職支援では学生一人ひとりの良いところをちゃんと主張できるように上手にエンカレッジ(刺激)して指導するようにと言っています」出席率95%超の学長特別講義学生の意識を醸成し、エンカレッジするために学長自らが手がけるのが『学長特別講義』だ。全学部の1年次全員(約2000人)が受講するため、4月から6月までかけて、約25回の講義が設定される。正課外の講義なので単位はつかない。講義時間は18時から19時30分。にもかかわらず、出席率は95%以上という。始めたきっかけは、2011年3月の東日本大震災だ。「当時、学生がちょっと浮き足立ったのです。被災地に応援に行かなくちゃ、ボランティアに行かなくちゃ、先生、行っていいですかと。気持ちは非常によくわかる。だけども、『とにかくボランティア』『行かないと悪い』というような感じもあったし、行ったらそれで終わりっていうのもダメ谷口 功 学長

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