カレッジマネジメント190号
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就業力を育成する59だと思った。だから、もちろん行くのはいいけど、これは10年20年で終わる話じゃない。だからあなたたちは、ボランティアに行って免罪になるのでなくて、今ここでしっかり勉強して、日本の社会はどうあるべきかとか、新しい産業の創出とか、医学で人を救うとか、将来いろいろな役割を果たすことも、日本の復興のために役に立つということなんだと理解させて、落ち着いて勉強をさせようと思った」この講義には、二つの目的がある。一つはこの地域=熊本の素晴らしいところを自覚させることであり、もう一つは、“なぜ・何のために学ぶのか”という、大学生としての使命を考えさせることだ。「せっかく熊本にいるのだから、この土地の良いところを自覚して、自信を持てと伝えています。私は熊本出身ではないけれど、外から来たからかえって、熊本の良いところが目に付くということもあるわけです。ご当地の人は、良いところがあるのにそれに気が付かない。そのため、自分のいる地域の良いところを表現することが、意外とできないのです。そういう地域を見直すことをちゃんとやるべきだというと、ローカルばかりと取られがちだけれど、そうではない。ローカルで終わるのではなく、それを世界につなげるのです。その地域、熊本なら熊本の良いところを言うことが、自分たちを認めてもらうことだし、相手を認めることでもある。それが世界人であり、グローバル化なのですよ」「だから、本学の歴史を振り返りながら、地域の話をしていくわけです。五高が明治20年にできましたと。なぜ一高から五高の5つの地域だったのかという話に始まってね。明治からの近代日本の150年の歴史は、私どもの大学の歴史そのものです」。歴代校長の中には講道館柔道の創始者である嘉納治五郎もいる、夏目漱石が教えた生徒の中に寺田寅彦がいるなど、著名人の話も交えて学生の興味を引きつつ、講義は2つめの目的につながっていく」「勝海舟さんが、当時の五高の学生さんに書いてくれた『入神致用(ニュウシンチヨウ)』という言葉があります。学問でも仕事でも何でも人並みじゃダメで、もっと上まで行って、神様の領域に入れと。そうして初めて『用』をなす、人とか社会の役に立つところに到達すると。そういう人になれという意味です。私の解釈ですが」。当時の五高の学生は、日本のリーダーになるべく高等教育を受けていたエリートだが、谷口学長は今の熊本大生も同じだと言う。「あなたたちは、こういう五高の歴史のある国立大学の、選ばれた学生なのだから、それだけのものは社会に返さないとダメだと。自分のために勉強するだけではダメだ、人や社会の役に立つという気持ちを持てと。そういう話を流れの中でしていくと、なんで勉強しないといけないかっていうのを、学生もある程度はわかるのですよ。その志を持つことは結果的に、就職のときも社会に出てからも、役に立っていくはずだと思います」COCとSGUの接続「国際化っていうのは、地域のことをちゃんと自慢できるということだよ」とたびたび話しているという谷口学長の構想の中では、『スーパーグローバル大学創成支援事業(SGU事業)』と『地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)』とは、ごく自然に結びついている。「地域の発展のためにもと申請した大学COC事業ですが、地域で終わってしまって世界につながらないのではダメで、学生さんのためにならない。さらに、学生を世界につなげることができる力を持たせるのに活用できる事業として、SGUを申請したわけです」SGUの推進本部は学長直轄の組織だ。2013年度から先行した大学院先導機構などでの世界トップの先端研究の推進、大学COC事業、教養教育改革も同様に、学長をトップリクルート カレッジマネジメント190 / Jan. - Feb. 2015学長特別講義風景

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