カレッジマネジメント190号
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64北大学76.8、大阪大学73.6、京都大学73.3、東京工業大学69.4、東京大学51.2がわが国の順位である。アメリカの上位校は研究水準が高く、産学連携も活発である。他方わが国では、名古屋大学や東北大学は産学連携が活発であるが、研究は必ずしも高水準ではない。東京大学は研究水準は高いが、産学連携は必ずしも活発ではない。一般に基礎研究を重視する大学では必ずしも産学連携は活発ではない。応用研究を重視する大学は、産学連携に努力することになろう。もっとも、ライフサイエンスの分野では、基礎研究から開発までの期間は相対的に短い。いずれにしてもわが国の国立大学は、再生医療やロボットなどのベンチャーに投資するため、ベンチャーキャピタルを設立するという。さしあたりは京都大学と大阪大学が設立し、東京大学と東北大学がそれに続くという。今後、大学発ベンチャーの設立はあらためて加速する気配が感じられる。アメリカの大学発ベンチャー3アメリカにおけるベンチャーの歴史は長い。シリコンバレーに限って見ても、1970年代後半以降にベンチャーが急増している。大学発ベンチャーという視点からすると、1980年に制定されたバイ・ドール法がスプリング・ボードの役割を果たしている。大学から企業への技術移転が促進されたのである。政府の研究助成によって得られた成果について大学が特許を取得できるようになった。TLOの設立が急増し、大学発ベンチャーに弾みがついた。1980年代初頭には、大学のビジネス・インキュベーターが設立され始め、ベンチャーの育成が進んだ。また、大学を核とするリサーチパークも、1980年代に設立があい次いだ。1986年には大学リサーチパーク協会が設立されている。大学リサーチパークは1990年代以降ますます増加し、現在ではその数は200近くに達している。大学リサーチパークには大学発ベンチャーも数多く立地している。ところで、1980年代には「ザ・シリコニング・オブ・アメリカ」という現象が展開した。シリコンバレーにならって、シリコンを冠するクラスターが全米に広がったのである。例えば、シリコン・ビーチ、シリコン・ハーバー、シリコン・フォレスト、シリコン・マウンテン、シリコン・ヒルズなどである。そして、1990年代には、ニューエコノミーが展開し、シリコンバレーが再び盛り上がりを見せた。大学発ベンチャーから急成長する企業も現れた。次いで、ソフト系のベンチャーやバイオ・ベンチャーが数多く登場した。2000年代に入ると、大学発ベンチャーの多様化が一段と進んだ。知識基盤社会への移行とともに、研究型大学は戦略的に財政基盤を強化し、連邦政府から多額の研究助成を引き出し研究開発力を強化している。こうした研究成果がイノベーションの源泉になっている。大学発ベンチャーがそうしたイノベーションの一翼を担っている。なお、アメリカの強さは、産学連携が活発であり、大学を核とする有力なクラスターが分散しているという状況である。さらに注目すべきは、企業家教育である。起業前に大学関係者が企業家教育を受けている場合が多い、実務経験を有している者も少なくない。しかも幼少期から自立への動機づけが行われている。ベンチャーへの挑戦の意欲は総じて強い。そして、企業家教育において定評のある大学院や大学が数多く存在している。最新の有力な評価の一つを揚げると、表1の通りである。この分野におけるバブソン大学の実力は広く評価されている。リクルート カレッジマネジメント190 / Jan. - Feb. 2015表1 アメリカ・企業家重視大学院等(2015年)資料:Entrepreneur誌大学院大学1ハーバードバブソン2バブソンヒューストン3ミシガンベイラー4ライスブライハム・ヤング5スタンフォードオクラホマ6ノースウェスタンシラキュース7ブライハム・ヤングノースイースタン8テキサス・オースティンサウスカリフォルニア9シカゴバルーチ10ヴァージニアマイアミ

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