カレッジマネジメント191号
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22入試・募集センターである。2010年に設置し、民間企業出身の石橋センター長が当初より指揮をとっている。マーケットの現状分析と入試や学生募集に関わる全ての検証及び見直しを行い、募集戦略をAO・推薦入試と一般・センター入試に区分し、現実的な戦術構築を推し進めている。例えば、学科ごとの募集優先順位をつけ、定員充足率100%に向けてステップバイステップで取り組んでいる。「大学を象徴するような学科」「学生の成長実績をアピールできる学科」等から徐々に定員充足を果たすことにより、大学そのものへの関心が集まり、ほかの学科に対する関心や志願に波及しているという。既に、健康栄養学科、薬学科では入学定員充足率100%を果たし、2015年度には国際観光学科、2016年度には「全学科入学定員充足」を目指している。改善にあたっては、入試・募集センターと入試募集委員会が連携しPDCAサイクルで推進している。経営上層部に対しては、入試・募集センターが運営会議にて進捗報告を行い、全学教授会では入試募集委員長が進捗報告とともに活動協力を求めている。「中長期計画に示していないことでも、現実的課題に向き合い、イノベーションを重ねることが必要」と安部学長も後押しをする。歩留率への着目と対応策の検討・実施、学力上位学生への特待生制度の積極的活用、高校訪問の手法の見直しなど、改善項目はこの5年間で大小50項目を既に超えているという。九州全域を地域と見据え、学生募集を重点化様々な改善を進める中で、学生募集重点エリアについても見直し、転換をしている。長崎国際大学のある佐世保市は、日本本土で最も西に位置する街であるとともに(地図参照)、東アジアという視点で見た時、そのほぼ中心に位置する場所でもある。その地で「国際」という名を冠した大学として、開学当初よりアジアを見渡した戦略を立て、韓国や中国等からの留学生の募集を強化してきたが、2010年度には定員充足率の70%を割り込み、過去最低の入学状況に陥った。加えて、留学生に対する入学後の教育負担や、アルバイトに従事せざるを得ないような彼らの経済状況にも頭を悩ませていたという。こうした状況をふまえ、国内、とりわけ、地域からの学生募集へと重点エリアを転換させる方向に舵を切り、2011年に策定した経営改善計画にもその方針を掲げた。特筆すべきは、地域として見据えているエリアが、地元長崎県のみならず、沖縄県を含めた九州全域であるという点である。2012年度入試に向け、エリア対策のトライアルとして沖縄県を重点強化し、2013年度入試に向けては、沖縄県専用のリーフレットや動画も制作した。そこには沖縄県出身の在学生や卒業生が実名・出身校名入りで数多く登場し、後輩にむけてのリアルで温かいメッセージを寄せている。2013年度入試からは、新規参入地域として山口県へも目を向け始めており、地域の広がりもみられる。学生募集重点エリアを拡大したことにより、それぞれの地の生徒・保護者・高校教員からのニーズに耳を傾け、それに必要な情報提供や対応がますます求められるようになった。地域の高校を訪問する際には、「大学側が伝えたい情報」よりも「高校側が知りたい情報、先生に役立つ情報」を職員が簡潔に提供している。2011年度入試以降は、入試日程に関しても「学事日程等大学側の都合」ではなく「受験生側の都合」を優先し、推薦入試の一部を国公立大学や競合大学の推薦合格発表後に志願できるようにした。また、成績優秀者を対象とした「特待生制度」に加え、地域の家庭の経済状況を考慮し、2013年度入試以降、経済的事情により就学が困難な優秀な学生に対する「減免奨学生制度」を制度化した。さらに、長崎国際大学に在学期間が重複する兄弟姉妹に対しては「兄弟姉妹在学者奨学金制度」を導入し、各自の授業料1割相当を給付するなど、家庭レベルで地域から選ばれるような仕掛けも施している。さらに、18歳人口が減少していく中で、「進路多様校から進学校まで」と地域の中で募集ターゲットを広げ、志願者層も重層化している。特待生制度の評価もあり、九州各県を代表するような高校からの入学者も増え始めリクルート カレッジマネジメント191 / Mar. - Apr. 2015

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