カレッジマネジメント191号
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36リクルート カレッジマネジメント191 / Mar. - Apr. 2015これから10年で激変する、介護・福祉業界の現状と未来超高齢社会に突入し、団塊世代が75歳以上を迎える2025年を目途に医療・介護制度改革が急ピッチで進められている。それに伴い、人材の確保や生産性の向上等、大きなニーズと変化が見込まれている。この介護・福祉業界の今後の未来に、大学はどのような貢献ができる可能性があるのか?日本における介護業界の現状と課題、今後の将来予測について、介護人材政策を専門とする労働政策研究・研修機構の堀田聰子氏に話を聞いた。2013年度の介護サービスの年間実受給者数は約566万人、介護職員数は約177万人程度となっている。年齢階級別に人口動態をみると(図表1)、2010年と2025年を比較すると、15~64歳人口は13.3%減少する一方で、介護サービス受給率が高い75歳以上人口は53.4%増加する。これにより、2025年に必要な介護職員数(実数)は、現状の年齢階級別・サービス類型別の利用状況がそのまま続くとした場合(現状投影シナリオ)でも213~224万人、一定の改革シナリオ(一般病床の機能分化、急性期病床への医療資源の集中投入、平均在院日数の短縮、在宅医療の推進等)に基づく試算(改革シナリオ)では232~244万人といわれている(図表2)。高まる需要に対応して良質なサービスを安定的に提供するために担い手の確保が喫緊の課題であり、介護の世界にもさらなるイノベーションが期待されている。イノベーションには、①現場レベル、②マネジメントレベル、③制度レベル、の3種類があるだろう。①の現場レベルとは、例えば認知症の人に対するケアの高度化や効果的なサービスの開発、アセスメントに基づくケアとそのアウトカムの蓄積を通じた、よりエビデンスに基づく専門性の高いケアの実現、セルフケアの支援や自立支援型ケアマネジメントのあり方等、ケア論あるいはサービス論の進化である。もちろん、介護機器やロボット等の開発も期待される。②のマネジメントレベルでは、例えばオランダの在宅ケア組織ビュートゾルフは、専門職による信頼に基づくフラットな自律型チームでケアの質と仕事の質を高めた結果、コストを下げることにも成功、世界的にも注目を集める。理念を共にする複数の事業者が共同で人材育成や事業展開等を行う取り組みも広がりが待たれている。③制度レベルでは、例えば事業所単位で人員配置や運営の基準を定める現在の考え方を生活圏域で必要な機能が確保されればよいと改めたり、ストラクチャ・プ介護人材の課題と将来の可能性大学に求められる役割と期待される人材とは?人数予測で思考停止せずたゆまぬイノベーションを特 集東京大学社会科学研究所特任准教授、(在オランダ)ユトレヒト大学客員教授等を経て、2011年より労働政策研究・研修機構研究員。専門分野は人的資源管理、ケア人材政策、博士(国際公共政策)。現在社会保障審議会介護給付費分科会及び福祉部会、同福祉人材確保専門委員会等において委員を務める。日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2015」入賞。堀田聰子お話を伺った方労働政策研究・研修機構インタビュー

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