カレッジマネジメント191号
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55これらのことから、法令上は、「職員」という概念が最も広く、その中に、教員、事務職員、技術職員などの「職種」が存在することがわかる。また、教員については、教授、准教授、助教などの「職階」が定められているが、他の職種の職員については定めがない。職種がヨコの区分だとすると、職階はタテの格付けであり、高度専門職の位置付けや処遇・育成のあり方については、教員や事務職員等との関係を含めて、職種をどうするのか、次いで、職階をどうするのか、という順番で筋道立てて検討する必要がある。高度専門職を組織・人事管理上どう位置付けるか大学分科会の下の大学教育部会で検討されている内容を公開された配布資料等で確認すると、「高度専門職」の設置に関する論点として、教員、事務職員、技術職員といった現在の職種にとらわれず、専門性が必要な業務に携わる人材について、①現在の職種を前提とした上で、特別の手当等による処遇を行う案と、②新たな職種(俸給表)を設けるという案の2つが示されている。想定される職種については、管理運営系、教学支援系(教務支援、研究支援)、学生支援系の3つの職域に分けた上で、それぞれの職域で考えられる職種を例示し、学位や国家資格など前提となる要件を示している。また、キャリアパスとして2つのパターンを例示している。一つは、大卒者を一般の事務職員として採用した後に、既存の組織で昇進を目指す場合と高度専門職としてキャリアアップする場合の2ルートが想定されるパターンである。もう一つは、URAなど高度専門職で中途採用された後に、そのまま高度専門職としてキャリアアップするか、既存の事務組織で昇進するか、教員として准教授・教授と昇進するか、という3ルートが想定されるパターンである。このような論点メモが配布された時点から、さらに議論は進んでいるものと思われるが、2点だけ課題を指摘しておきたい。一つ目として、教員や事務職員とは異なる新たな職種を設ける案について、採用、配置・育成、評価・処遇という人事管理面で、新たな枠組みを設けた方が良い理由をより明確にするとともに、職種を分けることで生じる問題は何かなどについても、実態を踏まえた検討を行う必要がある。二つ目は、高度専門職の「高度」を強調することで、自身の能力を高めながら、高度化する業務に取り組んできた事務職員の士気を低下させる結果につながらないかという点である。「高度」や「専門」の意味を掘り下げて検討しておくことが、制度設計を行う上でも重要である。急速に増加するURAも試行錯誤の段階大学はこれまでも、広報、産学連携、知的財産、国際交流、キャリア支援などで、専門領域において知識と経験を有する人材を無期または有期で採用してきた。期待通りの成果を得たケースから上手くいかなかったケースまで様々であろう。また、2011年度以降、国が財政補助等を通じ、専門性の高い「第三の職種」としてURAの定着を促した結果、いわゆる研究大学を中心にURAとして配置される者が年々増加している。その業務は、研究戦略推進支援、プレ・アワード(研究プロジェクトの企画立案支援、折衝・調整、申請資料作成等)、ポスト・アワード(研究プロジェクトの実施調整、予算・進捗管理、評価・報告等)などであり、スキル標準や研修・教育プログラムの策定等、全国的なシステムの整備も進みつつある。将来のキャリアパスを示し、積極的な配置・活用に取り組む大学もあるが、導入大学は全大学の一部にとどまっている。既存の事務組織との機能分担なども含めて、試行錯誤の段階であり、実効ある制度として定着するまでにはなお一定の時間を要するものと思われる。これらの取り組みをレビューし、成否の要因や克服すべき課題を明らかにすることで、高度専門職の導入や事務職員の高度化に関する有益な示唆も得られるはずである。長期雇用が中心の日本の大学に専門職は根付くのか次に、高度専門職と事務職員の関係を含めたこれからの「職員」組織(ここでいう職員は教員を含む)のあり方を検討するために、アメリカの大学が「職員」をどう分類しているか、確認しておきたい。リクルート カレッジマネジメント191 / Mar. - Apr. 2015

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