カレッジマネジメント191号
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カルスタッフを統率できる看護師の必要性をベースに、4年制での看護開設をじっくり議論してきたという。昨今の看護ブームとは一線を画する、肝の据わった計画である。同時開設となった子ども学部は、実は看護学部設立の協議のなかで枝分かれしたのだという。「当初は乳幼児が病気や障がいなどを持っていても、その子らしく生きていけるよう支援できる地域人材を育成するのが目的で、家族看護や医療保育の分野を中心にしようとしましたが、現行の学問領域では認可が難しく、結果的に看護と子どもの2学部に分けることになりました」。その経緯もあり、子ども学部には臨床医療系の教員も多く配置され、特色の1つともなっている。狭山キャンパスには小児・アレルギー科、小児神経内科を専門とするクリニックと、認可園でもある「かせい森のおうち」が開設され、学生が実習先としても活用できるほか、地域住民も利用できる。2学部200名強の今春入学者に対し校舎は1号館から5号館まであり、宿泊可能なセミナーハウスやグラウンド・畑等、広大な敷地はとても贅沢だ。特色ある2学部開設の背景には、これまで人に関わる職業人の育成を軸に教育を展開してきた大学ならではの教育体制の強みがあるようだ。家政大ではどの学部も、育成する人物像は女性中心の分野のなかで、目立つというよりも地に足を着けて生きる力を持つ職業人。社会に出てからも家政大の卒業生は味がある、辞めない、と評判だという。板橋と狭山でも基盤となるスタンスは変わらない。今後については既に将来構想計画委員会を立ち上げ、デイサービスや教育の充実と共に高齢者が再び学び直し、生きがいと日々の糧を得るための教育支援展開等も視野に入れているという。岩井常務理事の言葉は力強い。「地域の既存施設と協働しながら、一緒に狭山・入間を支えるネットワークを創っていきたいと思っているんです。しっかり生きていくため、収入(生きがい)を得るところまで責任を持って教育して、社会に送り出すのが家政大の教育ですから」。まさに昔も今も、「新しい時代に即応した学芸技能に秀でた女子」を育成する大学なのである。(本誌 鹿島 梓)東京家政大学は1881年渡邉辰五郎が湯島に「職業人養成」を目的に私塾を開設し、以来「女性の自主自律」をうたってきた伝統校である。板橋・狭山の両地にキャンパスを構えていたが、2009年に一度は板橋へ資本を集中させた。その5年後の2014年春に狭山キャンパスをリニューアルオープンし、2つの学部を同時開設した。一般的に都心回帰の募集効果が騒がれるなかで、敢えて郊外キャンパスに打って出た理由とは何か。「看護学部設立の構想は10年がかりでした」と岩井絹江常務理事は振り返る。2003年に中長期計画で10年後を見通した際、地域貢献・高齢者事業・乳幼児事業の計画が持ち上がった。埼玉の大手医療法人と連携し、チーム医療の現場でコメディ60リクルート カレッジマネジメント191 / Mar. - Apr. 2015子育て広場は地域住民や板橋の親子にも広く開放され、自然の中でのびのび遊ぶ子どもに接することができる。

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