カレッジマネジメント191号
9/62

とは、政令指定都市と東京23区を指す。表1の示すように、大学数ではその他の地域に61.8%が立地している。ただ、国立の68.6%、公立の71.7%がその他の地域に存在している。学生数でも、国立と公立はその他の地域で存在感を有している。これに対して、私立は大都市にややウェイトがかかっている。私立大学が存在しない県も島根、高知、鳥取の三つに増えている。その他、私立大学の存在感の薄い県も少なくない。国立は、大都市に大規模な総合大学が研究型大学として立地している。その他の地域においては、医学部が重要な役割を果たしている。公立は、小規模な大学がその他の地域に数多く立地し、地域との連携を強めている。これに対して、私立大学は、大規模な大学が大都市に集中している。私立大学の状況を端的に示しているのが、表2である。大学数では、地方・中小規模が39.6%と最も多い。ここで中小規模とは、在籍学生数が2000人未満の大学である。逆に、学生数では、大都市・大規模が52.6%を占めている。赤字校は地方・中小規模が目立っている。そして、大学全体に占める赤字校の比率は35.4%である。大都市・大規模においては赤字校の比率は7.4%に過ぎないが、地方・中小規模においては54.1%に達している。地方・中小規模においては入学定員割れが過半を占めており、収入減が赤字の原因となっている。地域社会との関わりにおいては、大都市・大規模はこれまで関係が比較的稀薄であった。しかし、今後、大都市には前述したような問題が集中的に生ずる。規模にかかわらず、大学には新しい役割が求められよう。他方、地方においては、大学と地域社会の関わりは密になり得る距離にある。やはり地域の問題解決にあたることが今後求められることになろう。大学の対応4大学が地域貢献を進めるにしても、何よりもまず地域から学ぶ必要があろう。大学は、地域の現場に蓄積された知的資源から学ぶところが大きいはずである。また、地域における問題解決や挫折、障害などを知る必要もある。地域とのさまざまな共同作業も必要になろう。さて、地域社会から期待される大学の役割は多様である。ただ、本稿では、とりあえず、早急に、かつ、中長期的に発生が予想される教育・研究需要に論点をしぼる。その際、程度の差はあれ、どの地域においても生ずる需要に着目する。具体的には、前述の箇所で重視して紹介した超高齢社会における地域福祉を取り上げる。この問題のフレームワークは、地域包括ケアシステムである。ただ、制度的にも、実体的にも、さまざまな未解決の論点が存在している。十分に大学における調査・研究の対象になろう。地域の実情をふまえた提案が必要になると思われる。また、実体面では、地域社会における医療と介護の統合が主要な論点になる。これまで医療と介護はそれぞれ根拠法規が異なり、両者の間には機能面でギャップが存在していた。だが、昨年、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」が成立し、本年4月から施行されることとなった。リクルート カレッジマネジメント191 / Mar. - Apr. 2015特集 地域で選ばれる大学大学数学生数赤字校数大学数に占める赤字校比率地方・中小規模233(39.6)201,153(9.7)126(60.6)54.1大都市・中小規模108(18.4)93,490(4.5)50(24.0)46.3地方・大規模125(21.3)685,285(33.2)23(11.1)18.4大都市・大規模122(20.7)1,083,440(52.6)9(4.3)7.4合計588(100)2,063,368(100)208(100)35.4表2 私立大学の地域分布資料:日本私立学校振興・共済事業団「今日の財政」(2013年度)(注)大都市は政令指定都市及び東京23区、大規模は在籍学生数が2000人以上  ( )内は構成比(%)

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です