カレッジマネジメント192号
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18札幌大学は、1967年に札幌市に創設された私立大学だ。教育目標として「外国語に堪能な経済人」の養成を掲げていた同大学は、開学当初、経済学部と外国語学部の2学部から構成されていた。その後、1989年の法学部開設を契機として、「文科系総合大学」を標榜して学部・学科の増設を進め、1997年には経済学部、外国語学部、経営学部、法学部、文化学部の5学部からなる体制を確立した。ところが、このような拡大路線は最近になって大きく転換された。2013年4月に従来の5学部6学科が1学群1学域13専攻へと一元的に改組されたのだ。さらには、2014年12月に学則を改正(本年4月1日施行)し、大学のガバナンスのあり方が大幅に変更された。教育・研究組織の改革が国立大学を中心に着手されている中、私立大学において大胆な組織改革を実施したケースは稀だ。改革に踏み切ったのにはどのような背景があったのか。また、どのような改革が実施され、成果や課題がみられるのか。佐藤俊夫理事長、桑原真人学長、山田玲良理事・副学長ら、改革を中心的に担ってきた関係者にお話をうかがった。札幌大学は、開学後30年間で5学部を擁する大学へと組織的に拡大を遂げた(図表1)。収容定員は現時点で3980人(2014年5月1日現在:学群及び学部)であり、北海道では比較的大規模な大学だ。そもそも、絶対数でみれば高等教育機関が多く存在しない北海道の地理的特性を踏まえれば、札幌大学は地域の人材育成に大きな役割を果たす機関なのだ。このような組織的・規模的発展により、最盛期には入学志願者が1万4000人程度、在籍学生数が7000人程度にのぼり、財政的に安定するという「光」をもたらした。しかし、「光」に眼を奪われる中で、背後に存在する「影」を見過ごしてしまった。松本源太郎理事によれば、改革以前の札幌大学が抱えていた課題の所在を一言で表すと「教育力」だという。具体的には、受験学力が十分でなく、多様化した学生が入学する状況下で、組織の一元化による教育の可塑的な提供の実現リクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015発展の影に教育力の課題図表1 札幌大学の学部学科変遷(概要)組織改編により 教養部廃止 開学 ロシア語学科 英語学科 経済学科 経済学部 1967 1968 1989 1995 1997 2006 2007 2009 2013 2014 外国語学部 1学域 13専攻 地域共創学群 比較文化学科 文化学科 日本語・日本文化学科 文化学部 経営学科 産業情報学科 ビジネスコミュニケーション学科へ名称変更 経営学部 法学科 自治行政学科 法学部 募集停止 募集停止 募集停止 募集停止 募集停止 廃止 廃止 募集停止 募集停止 募集停止 募集停止 募集停止 札幌大学C A S E2

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