カレッジマネジメント192号
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観点からも、企業経営において求められるようなテンポの良い意思決定ではなく、時間軸が設定されて「将来に向けての改革」であるが故に議論や説得の機会が確保されて改革が進行された意味をよく汲み取る必要がある。また別の観点ではあるが、例えば、「遠山プラン」のような「外圧」の存在も大きい。このことを大学の自律性を損なうものとして捉えるか、大学が大学外の動向に感応しながら改革を模索し続けていく姿として捉えるか、いずれにせよ、「外圧」が想定するイメージがそのままコピーされて大学の中に移植されたわけではない。対応することを迫られる改革プロセスの中で、そこから生じた摩擦や葛藤それ自体が、大学組織が古典的なその相貌から転換し、組織開発されていく、あるいは、関わった教職員の能力開発にも繋がっていっている事例も目を引く。まさに大学改革は、それ自体が生命力に満ちた組織開発そのものであるともいえる。このように、この間、大学が成し遂げてきた変化と成果の中で、表面に出てこなかった暗黙知として了解されてきた事項を可能な限り可視化・言語化することが、今後同様の歩みを進めようとする大学人にとって有用な知見となることを目指して、われわれの研究プロジェクトは進められてきたのである。当たり前の話ではあるが、経営のためには経営資源が必要であり、またそれは、ただ単に無秩序に存在するのではなく、適宜動員可能な体制で準備されていなければならない。では、それはどのような方法で準備できるのか。恐らく、そのような資源を改革の事前にリストアップして準備し改革に踏み切れた大学は少ないであろう。いずこの大学も「走りながら考える」といった事例が多く、企画の策定と実施サイクルといった模範的構図や正統な組織論だけでは、スッキリと説明することが困難な事例が多いように見受けられる。そのことは、制度デザインと現実の変革との間には、その中間的な知見や方法的認識が必要になってくることを示しているのかもしれない。この間、高等教育政策は、質保証体制の精緻化と軌を一にしながら、大学教育の内容・方法面への関与を強めてきた。教育改善や組織革新を促すことを目的に、GP等による政策誘導という新しい政策スタイルも開発されてきた。その中で、ことガバナンス改革については、法改正による制度デザインの完成形の提示という、極めて古典的な手法に留まっている。今後、制度改革が各大学の学則レベルでの対応に至っているかを、フォローアップして制度改革の実質化を目指す考え方もあろうが、それとても、結果とし制度デザインと改革実践プロセスで生じる摩擦や葛藤が、組織や教職員の成長に繋がる事例も制度デザインと実践の間に、「大学個別の改革ストーリー」がある

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