カレマネ
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11リクルート カレッジマネジメント193 / Jul. - Aug. 20152025年にかけ衰退傾向に歯止めをかけ、いきいきとした未来を迎えるためには、働く人が増え、税制等の社会システムの担い手が増えることが期待される。ところが、2025年にかけての繁栄シナリオには、これまでの日本社会ではみられなかった大きな内在リスクが存在する。一般に、経済の繁栄シナリオでは、[経済活動が活性化]し、[雇用機会が創出]され、それにより[就業者が増加]し、就業者が消費者や次の経済活動を生み、[経済が活性化]する…という好循環が回る。ところが、人口減少に転じたわが国では、[雇用機会が創出]されても、人口減少や少子高齢化により、人材が獲得できない[人これまでの延長で2025年を迎えると、社会の活力は低下する。この[経済の停滞]がひきがねとなり、[雇用機会が喪失]し、それにより[離職者や解雇が増加]し、[失業者や無業者が増加]するという悪循環が発生する可能性がある。さらに、雇用代替やグローバル化によって[雇用機会が喪失]や[離職者や解雇が増加]が起こるが人材要件の違いから再び職を得ることができず、[失業者や無業者が増加]することにより、悪循環が加速する(図表8)。このように、離職確率が上昇し、労働市場への参入確率が減少する、悲観的なシナリオで2025年の労働市場をシミュレーションした。仕事を失う確率がこれまでの2倍に、仕事に就ける確率が1/2倍になるという悲観的なシミュレーションでは、就業者は2015年から557万人減少し5717万人に、無業者が500万人増加し5025万人になる。失業者は106万人増加し351万人になり、失業率が2.0%悪化し、所得平均も56.3万円減少し299万円となる。その結果、2025年の労働総所得(就業者数に所得平均を乗じたもの)は171兆円と、2015年から52兆円も減少する(図表9)。現在の「働く」を取り巻く際どい均衡状態が崩れ、悲観的なシナリオが現実のものになれば、社会の活力は大きく損なわれ、暗澹とした2025年を迎えることになる。楽観的な未来シナリオ3材不足]が発生する可能性が高い。こうなると、好循環は断ち切られ、繁栄シナリオが悲観シナリオに転化してしまうのだ(図表8)。人口減少や少子高齢化が進むことを理解していても、今なお、日本型雇用慣行の主役であった、「日本人・男性・正社員」というパラダイムから脱することができていない企業は多い。そのため、人材ニーズがあっても人材を確保できず、人材不足に悩んでいる。それはベースシナリオのシミュレーション結果でも裏付けられている。2025年にかけて過去を延長するだけでは、高齢者や女性の就労は十分なレベルにはならない。繁栄シナリオが人材不足によって切断されることが、強く懸念される。特集 2025年の大学図表8 2025年に向けた2つのリスク離職者・ 解雇増加 経済停滞 失業者・ 無業者増加 雇用機会喪失 人材不足 経済活性化 就業者増加 雇用機会創出 衰退シナリオ 繁栄シナリオ 衰退が加速する悲観シナリオ繁栄シナリオに内在するリスク

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