カレマネ
18/64

ら70%の間を推移し、あまり変化がありません(図表3)。社会の要請はあるのに、働く人々のキャリア自律への意識は高まってこない。その背景にはキャリア設計の問題の複雑化があると考えています。キャリア設計は単に自分の仕事への志向だけで決めていくわけにはいきません。結婚するのか、するとして共働きを目指すのか、育児や介護などとどうバランスをとっていくのかなど、職業生活以外の部分にも目を配りながら、複雑な方程式を解いていく必要がある。あまりの問題の複雑さに、自らのキャリアと正面から向き合えていないことが、働く人々のキャリア意識が高まらないことにつながっているように思えます。―――個人の力だけでは難易度の高い、“キャリア自律”を実現していくために大学ができることは何でしょうか。個人のキャリア自律の実現シナリオとして、私は大きく2つの段階があるのではないかと考えています(図表4)。まず、働く人々やこれから職業を選ぼうとする学生のキャリア自律を促進するためには、その前提として、職業能力の「見える化」が必要です。多くの人が会社員になっていることを考えれば、会社で仕事をして、成果を出すために必要な職業能力こそ「見える化」する必要があるでしょう。ですが現在既にある一般的な職業評価モデルは、企業からは「使えない」という評価を受けています。逆に「使える」とされているのは、自社の職務に関する職業能力を、自分達独自で体系化したような評価モデルです。例えば、「コンサルタントレベル1」のように、ある会社のある段階の職務に必要な職業能力には、いくつかの要素が含まれています。その中にはその企業ならではの特殊な能力もあるでしょうが、どの企業にも共通するような一般的な能力も組み合わされているはずです。こうした一般的な能力育成の部分を大学が受託し、企業向けにカスタマイズしていく形で参画していく。または社会人の受け入れ枠を充実させ、大学で一般的な能力を付加的に学んでもらうことも考えられます。このような形で職業能力の見える化や育成に貢献していくことが、改革の第1段階です。第1段階の取り組みを通じて、大学における職業能力評価や職業教育の手法は進化していきます。知識や経験が蓄積され、「あの大学で学んだことは、会社での仕事に非常に役に立つ」という段階に至れる可能性があります。ここまで来ると、その大学で学位を得ることが企業の採用基準にも設定されるようになる。これが第2段階となります。この段階になれば、大学にはプロを育成する様々なコースが存在するようになります。コースの教員は大学のプロパーばかりではなく、そのコースを卒業した学生が企業に入って経験を積んでトップクラスのプロになり、その後大学に戻って次世代のプロを教育するようになるでしょう。第2段階まで進んだ大学が各地に存在し、キャリアの道筋として一般的になっていけば、キャリア意識のあまり高くない学生や社会人であっても、自然にキャリア自律を実現していけるようになるはずです。リクルート カレッジマネジメント193 / Jul. - Aug. 201518“キャリア形成”の主導権は、企業から個人へ図表3 職業生活設計の考え方別労働者割合 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 その他、わからない、不明表中の数字は、自分で考えたい・計 会社で職業生活設計を提示してほしい どちらかといえば、会社で職業生活設計を提示してほしい どちらかといえば、自分で職業生活設計を考えていきたい 自分で職業生活設計を考えていきたい 67.9% 70.6% 69.1% 67.1% 67.1% 68.4% 67.9% 65.5% 67.0% (%) 出所:厚生労働省「能力開発基本調査」

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です