カレマネ
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27リクルート カレッジマネジメント193 / Jul. - Aug. 2015いかと言ったら、そんなことはない。私は一つには、これからの大学は学生のターゲットを18歳に絞ることはもう止めたほうがいいと思っています。日本は25歳以上の大学入学者の割合が2%と低いのですが、ヨーロッパは20%近いところがたくさんあります。つまり社会人の学び直しが一般的に行われている。今後の日本社会でも、それに対応した大学改革が求められていくでしょう。 大学入学者の学力についても、大学の勉強についていけない子を無理やり大学に入れるというのは無駄なことです。しかし、日本の子どもが他の国に比べて基礎力が劣っているのかと言ったら、そうではない。ただ、勉強しなくても高校を卒業でき、大学にも入れるという現状が問題なのだと思います。そこで今回の改革では、高校生自らが高校段階での学習成果を把握するための「高等学校基礎学力テスト(仮称・以下同)」の導入を計画しています。多様な能力を積極的に評価して行くと同時に、基礎基本の学力もきちんと担保していくことが必要との考えからです。 大学は、AO入試や推薦入試を実施する際にはこの基礎学力テストの結果を参考資料の一部として用いることも可能です。基礎学力テストは、民間の検定試験で一部代用することも含めて検討しており、英検だったら何級以上あればよいとか、TOEIC®であれば何点から何点の範囲であればよいなど、一種の段階別評価や基準点のようなイメージで捉えてもらえればよいと思います。これからも「選択され続ける」大学であるために──このあたりは、従来の入試方法に慣れている大学人は、考え方を大きく変えなければならないところですね。 まさに人材の多様化が求められる時代だからこそ、入学試験も一律である必要はないんです。ただ、そうした対応をやれる大学もあるけれど、やらない、できない大学もあるでしょうね。では、対応できない大学が、これからも選択され続けるかというと、私はそうではないと思います。 うちの大学はこういう学生を育てる、こういう学生に学位を与えて社会に送り出すのだということをポリシーに明確に謳い、同時に入試改革にも熱心な大学が結果的には選択されていくはず。もちろん、これには相当手間がかかりますから、国としてはそういう大学に対してはインセンティブ、財政的な支援もしながら応援していくことになると思います。──これまで日本は大学入試がゴールの国だったような気がします。偏差値とか、どの大学に入った人だから優秀だというような。しかしこれからは“卒業の国”になる。何ができるようになったかとか、どんな人材として社会に出て行くかということが重要になってきますね。 それはもう30年前からそうなっていないといけなかった。今の企業だって、東大出ているから出世が早いなんてことはないんじゃないですか。もしまだそうした考え方に囚われている人がいるとすれば、それは“幻想”だと申し上げたい。 課題解決能力、企画創造能力、人間としての豊かな感性、国際コミュニケーション能力、日本人としてのアイデンティティ…これらを総合的に身につけていかないと、これからは生き残っていけない。 つまり今まで以上にこれからの時代は厳しい。厳しいけれど逆にいえば、それだけ自分の多様な能力を伸ばすチャンス、可能性のある時代でもあると思うのです。可能性を活かせる人にとっては面白い社会が到来しつつある。そのチャンスを活かせるかどうかは、自分の心といいますか、自分自身に対する自己評価によって決まるんです。自己評価を高めればその通りになれる。こうして、全ての人達にチャンスや可能性を提供できるように教育を改革していけば、日本という国は必ずピンチをチャンスに変えていくことができると思っています。(まとめ/広重隆樹 撮影/西山俊哉)特集 2025年の大学

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