カレッジマネジメント194号
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52もう一つ、外国語学部の教育改革において特筆すべきは「世界教養プログラム」の導入である。世界教養プログラムは、導入科目、基盤科目、応用科目によって構成されている。このうち基盤科目は世界教養学科のみの開講で、複言語と対応した教養教育プログラムとなる(他学科にも各専攻言語に対応した「コース科目」が置かれている)。また応用科目では、6つの地域区分と12のディシプリンを有機的に組み合わせた72テーマが用意されている。72テーマの約3分の1が英語開講授業であり、教養と同時に英語力を高める仕組みだ。これらに加えて、世界教養として重視されているのが歴史教育だ。導入科目では、「世界理解の方法」、「日本理解の方法」と題された近現代史を学ぶ授業が、全学科1年次の必修となっている。「世界目線から日本を見る力を養うことが目的。外国語大学ならではの、現地の言語・文化に根差した歴史を学べる点が特徴だ」と亀山学長は話す。亀山学長が名古屋外国語大学の改革案を提示したのは、就任からわずか1カ月余の2013年5月であったという。英語教育と複言語教育を基盤に世界教養を育てるとのアイデアは、この就任当初の改革案の中に既に含まれていた。亀山学長は就任当初の名古屋外国語大学の状況について、次のように振り返る。「法人の強力なバックアップの下に以前から改革が進んでいたこともあり、ガバナンスの基盤ができていた。またPUTをはじめとする特徴的でレベルの高い英語教育等、多くのものが揃っていた。ただ、修得した外国語を用いて話すべき内容、教養については底上げが必要であった。学生に教養とは何かを考えるヒントだけでも学ぶ機会を用意できないかと考えた」。改革案の実現に向けた意思決定はトップダウンによって進められた。しかし、情報がトップ層に集中し、現場との距離が開いた結果として、説得に苦慮する場面もあったという。トップ層と現場教員の意思共有を図るべく導入されたのが、図表2に示す教育改革構想会議、及び教育改革推進室の仕組みである。教育改革構想会議では、学長を中心に改革構想の立案が行われる。これに対し教育改革推進室は、改革構想案の検証と具体化に向けた作業を進める。教育改革推進室には、改革のコアとして4つの部会が設けられており、それぞれ各学科から推薦されたメンバーが配置されている。教育改革推進室の各部会では、学長自身が構想の説明に加わり、参加者に改革の必要性と熱意を伝える。トップ層が考案した改革案を、各学科からの推薦者が検討し、オーソライズする手順を踏むことで、全学としての意思共有を進める仕組みである。「教育改革構想会議、教育改革推進室の中で、多くの時間を議論にかけている。その結果、一度は決まりかけた構想が覆る場面もある。だが、その過程に意義がある。文学者としての経験でも、繰り返しの改訂が、より良い翻訳につながっていった。何度変わっても、最終的に良いものができることが重要だ」と亀山学長は話す。また、提案を実現していくうえでは、教育改革推進室の室長として事務能力の高い教員を起用したことが非常にうまく機能したという。例えば、執行部と学部との間で合意がとれず、改革が動かなくなる事態が生じた際、推進室長を務める教員が説明に回ることで解決が図られた。「名古屋外国語大学の改革は、彼女の活躍に支えられた側面が大きい。トップとして示したアイデアを、迅速かつ厳密に図式化して説得に回ってくれた。改リクルート カレッジマネジメント194 / Sep. - Oct. 2015教育改革のプロセスと意思共有の仕組みの整備図表2 名古屋外国語大学における教育改革の推進体制10名学部再編部会9名国際連携プログラム構想部会10名世界教養プログラム部会4名大学院改革部会室長部会長 +α基本構想チーム教務部長 再編対象学科等の長等学長補佐(教育改革担当)学長(学長室)教育改革構想会議教育改革構想の立案2015年度4月発足教育改革構想案の検証と具体化作業教育改革推進室事務 教務課法人企画調査課連携

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