カレッジマネジメント194号
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53革は、このような人材がいないと進まない」と亀山学長は話す。名古屋外国語大学における改革の成果は、入試結果に如実に表れている。図表3に示す通り、名古屋外国語大学では、志願倍率の上昇を伴いながら、入学定員を段階的に増やしてきた。2014年以降の志願倍率の急増は併願制度の導入に拠るものであるが、同様の制度で実施された2014年度入試と2015年度入試の結果を比較しても志願倍率は上昇している。特に2015年度入試では、外国語学部の入試倍率が上昇した。世界教養学科の新設と新たな教育システムの導入に伴う効果といえるだろう。また入学者の質という側面でも、外国語学部の改革が影響を与えているという。「世界教養の名に惹かれて入学してきた学生は、自分なりの問題意識を持っているように感じる。世界教養プログラムを担当する教員からも、授業での質問の水準が今までとは全く違う、との声が聞かれる」と亀山学長は話す。また改革を進める中で、教員側の変化も進んだ。特に若い世代の教員において、所属を超えた交流と協力が盛んになったという。この間の教員の変化の過程について、亀山学長は次のように述懐する。「はじめに学科を超えた教育プログラムのシャッフルを、トップダウンで行った。特に集中的な英語教育プログラムの創設が、その後の改革のエンジンになった。さらに、ワールドリベラルアーツセンターや教育改革推進室の創設を通じて、大学の活動に現場教員が積極的に関わる仕組みを整えた。そこに参加する先生方が、問題意識を持って自律的に動き出してきた」。トップから現場教員へ、大学を変えていくための土壌が段階を踏んで広まっていったこともまた、名古屋外国語大学における改革の副次的な成果といえるだろう。世界教養の理念を核とする改革は、亀山学長にとって、東京外国語大学時代にやり残した課題でもあったという。外国語大学の未来を見据えた亀山学長のアイデアは、名古屋外国語大学におけるガバナンスの基盤、充実した英語教育の実績と出会うことで、短期間での実現をみた。また改革を進める過程では、意思共有を図る仕組みの創設を経ることで、現場教員の問題意識の醸成と、所属を超えた交流と協力が段階的に進んでいった。大学の革新に必要な課題意識とアイデアが、組織や立場を超えて持続的に進化していく過程を、名古屋外国語大学の事例に見ることができる。亀山学長は、自らを評して、革新への欲求を持つ典型的なモダニストであると語る。また、名古屋外国語大学の経営陣にもラディカルなモダニズムを持つ人材が揃っているという。「名古屋外国語大学の改革は、まだまだこれから。自分としても、法人としても、今までの取り組み、他の大学の取り組みを発展的に上書きするような、さらなる改革プランを抱いている」と亀山学長は話す。年度内には、社会科学系の教育基盤の強化を含む未来構想の発表も予定されている。2017年、2019年に向けた改革案も、具体化に向けて既に議論の俎上にあるという。英語が当たり前になる時代の、さらにその先に向けて、名古屋外国語大学の革新は止まらない。リクルート カレッジマネジメント194 / Sep. - Oct. 2015(丸山和昭 福島大学総合教育研究センター 准教授)特集 進学ブランド力調査2015改革の成果としての志願者増と学生・教員の変化0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 0 5 10 15 20 25 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 6.5 680 680 680 680 720 720 720 820 820 900 4390 4238 4512 5289 6095 5869 7112 7557 19598 21834 6.2 6.6 7.8 8.5 8.2 9.9 9.2 23.9 24.3 2008年 外国語学部に英語教育学科を開設 2012年 留学費用全額支援制度を開始 2013年 現代国際学部に国際教養学科を開設 2014年 一般入試にて3学科までの併願を可能とする 2015年 外国語学部に世界教養学科を開設 志願者数 定員 志願倍率 定員/志願者数(人) 志願倍率(倍) 組織と立場を超えて持続する改革のストーリー図表3 名古屋外国語大学における志願者数の推移 (2006年~2015年)

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