カレッジマネジメント194号
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57このように、京産大は多様な打ち手を講じることで、受験生を始めとする社会への発信力を高めてきた。では、こうした教学改革を支えるガバナンスはどのような仕組みになっているのだろうか。京産大における全学と学部の関係性は図表2の通りだ。「学部」、「学長室」、そしてその下で全学の教学運営を支える「教学センター」が連携する構造となっている。なかでも、従前の各学部の「事務長」を「学部長補佐」という新たなポストとし、学長室所属としたことに加え、この「学部長補佐」が教学センターの各学部担当「課長」として兼務していることが注目される。つまり、学部長補佐が全学と学部を結ぶ結節点として機能しているわけだ。学長室が中長期戦略のプランニングを行っているが、そこに学部長を補佐する役割を担う学部長補佐が入ることは全学の連携を図るうえで重要だ。このガバナンス構造の下、学長のリーダーシップが発揮しやすい構造になっていると大城学長は述べる。毎月、各学部長と学部長補佐が学長のところに来て教授会の報告を行うことになっているという。学部長の選出も、学部で選挙したうえで順位をつけずに複数候補者を学長に挙げ、その中から学長が1人を指名する仕組みになっている。必ずしも1位を指名するわけではない。学部長は学部の利益代表者ではなく、大学の教学面を担うメンバーであることを踏まえ、それに見合う資質の有無をみて決定するのだと大城学長は説明する。こうした体制が社会ニーズに即した機動的な改革を可能にしてきたといえるが、もちろん課題はあると大城学長は指摘する。実は、今年度入試の志願者は減少した。大学が集中し競争の激しい関西地区ではライバル校の動静がストレートに影響を与えるからだ。京産大の強みをさらに強化する方策が常に求められる。いま大城学長の懸念は、これまで強みとしてきたワン・キャンパスの広がりに限界が見え始めていることだ。京都にあることは強みだが、古都だからこその厳しい建物制限を受け、この地でこれ以上キャンパスを拡大していくことは難しくなっているという。10年、15年先を見据えて持続可能性を維持するためには、将来的に第二キャンパス設置の選択肢も模索していく必要があるかもしれない。ただ当面は、活気ある京産大をどう維持していくのかが課題だ。その点ではスポーツ強化も一つの柱だと大城学長は述べる。スポーツ強化推進室を設置し、今後はラグビー、野球、陸上等のスポーツ支援を強化していく予定だ。スポーツが強いとキャンパスが元気になるという。すでに多くの魅力的な取組みを展開してきた京産大だ。今秋の50周年記念式典では次代を乗り切るための戦略的な将来像が提示されるにちがいない。引き続き注視したい。リクルート カレッジマネジメント194 / Sep. - Oct. 2015(杉本和弘 東北大学高度教養教育・学生支援機構教授)特集 進学ブランド力調査2015教学改革を支えるガバナンス構造大学 学長室 教学センター 学長 学部 学部長 学長室長 (兼務) 教学センター長 大学方針・ミッション 提案・報告 ミッション 部目標 大学方針・部目標 支援 学部方針・部目標 支援 学部長補佐 学部担当課長 学事担当 戦略企画担当 教育支援研究開発担当 連携推進担当 創立50周年記念事業推進担当 教務担当 就学支援担当 融合教育担当 教学センター事務部長 図表2 全学と学部の連携体制

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