カレッジマネジメント195号
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34リクルート カレッジマネジメント195 / Nov. - Dec. 2015いることから、まず組織及び業務全般に関する見直しの視点を国立大学法人評価委員会から平成26年9月に提示頂き、これを踏まえて平成27年6月に通知を発出した。その内容は教育研究の質の向上や法人のガバナンスの充実から、法科大学院、附属病院や附属学校の機能の充実・強化まで幅広く盛り込まれている。このため、この通知の内容は、全法人を対象に見直すべき点を全般的に示したものであり、全ての項目が個々の法人に一律に当てはまるものではなく、各法人の状況に応じて該当する内容は異なってくるものである。こうした内容と併せて特に今回強調しているのは、大学として特に重視する取り組みについて、明確な目標を定め、その目標を具体的に実現するための手段を策定し、その手段が遂行されているかどうかを検証することができる指標を設定すること、いわゆるPDCAを意識した目標設定を行う点と、より戦略性が高く意欲的な目標・計画を積極的に設定することを期待している点にあるといえる。これらは、中期目標・中期計画を設定する本来の趣旨を実質化していくためにも極めて重要な作業であるが、第2期までは必ずしも十分であったとは言えない点があった。今回実際に各法人から提出人文・社会科学、学際・特定分野は、人間の営みや様々な社会事象の省察、人間の精神生活の基盤の構築や質の向上、社会の価値観に対する省察や社会事象の正確な分析など重要な役割を担っている。また、学際・特定分野は、その学際性・個別分野の個性等に鑑み、社会構造の変化や時代の動向に対応した融合領域や新たな学問分野の進展等の役割が期待されている。 特に、成熟社会の到来、グローバル化の急激な進展等の社会構造の変化を踏まえ、教養教育を含めた教育の質的転換の先導、理工系も含めた総合性・融合性をいかした教育研究の推進、社会人の学修需要への対応、当該分野の国際交流・発信の推進等、各分野の特徴を十分に踏まえた機能強化を図る。 具体的には、養成する人材像のより一層の明確化、身に付ける能力の可視化に取り組む。また、既存組織における入学並びに進学・就職状況や長期的に減少する傾向にある18歳人口動態も踏まえつつ、全学的な機能強化の観点から、定員規模・組織の在り方の見直しを積極的に推進し、強み・特色を基にした教育・研究の質的充実、競争力強化を図る。 教員養成大学・学部については、今後の人口動態・教員採用需要等を踏まえ量的縮小を図りつつ、初等中等教育を担う教員の質の向上のため機能強化を図る。具体的には、学校現場での指導経験のある大学教員の採用増、実践型のカリキュラムへの転換(学校現場での実習等の実践的な学修の強化等)、組織編成の抜本的見直し・強化(小学校教員養成課程や教職大学院への重点化、いわゆる「新課程」の廃止等)を推進する。人文・社会科学、学際・特定分野教員養成分野各国立大学が機能強化に取り組むための出発点として、各大学の強みや特色、社会的役割を明らかにし、社会の要請に応えていくために、大学の自主的・自律的な取組を尊重しながら、各国立大学と文部科学省が、意思疎通の連携を行いつつ、共同して「ミッションの再定義」を実施(平成24~25年度)。これを踏まえ、各分野における振興の観点を整理図表2 ミッションの再定義における振興の観点頂いた素案を見ると、客観的な指標の設定や戦略性の高い目標設定については、各法人の努力と意欲的な内容が盛り込まれていることがうかがえる。一方で、この通知に関しては、特に組織の見直しについて、これまで進めてきた本来の見直しの趣旨とは異なる捉え方がされてしまった点があった。改めて文部科学省の考え方「新時代を見据えた国立大学改革」の概要をここで示しておきたい。■新時代を見据えた国立大学改革(概要)世界規模で急激に変化する社会の中で、今、我が国は、科学技術イノベーションの創出、グローバル化を担う人材の育成、震災の経験を活かした防災対策、高齢化と人口減少の克服、活力ある地方創生等、大きな課題に直面している。国立大学は若者の育成に重要な役割を果たす国の中核機関である。変化を柔軟に受け止め、教育組織の在り方の見直しを含め、積極的に自己改革を進めることが求められている。そういった状況の中で、従来型の教育を続けていて、新しい時代に求められる「真の学ぶ力」を育てられるだろう

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