カレッジマネジメント195号
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39リクルート カレッジマネジメント195 / Nov. - Dec. 2015を通じて、オープンイノベーションの中核となる研究成果の実用化、社会実装へとつなげる構想である。このように、各大学においては、これまでの実績を生かし、各大学の置かれた状況を分析しながら、今後の6年間の展望を描いており、今後の活動に期待の持てる内容となっている。新たな教育研究組織の創設が、大学を活性化させるまた、第3期がスタートする平成28年度には、数多くの大学で学部・大学院の教育研究組織の再編が予定されている。近年、設置または設置予定の主な新学部を示したのが図表5である。第2期に入り、平成24年度に設置された山梨大学生命環境学部から始まり、平成26年度には鉱山学の伝統を生かして設置された秋田大学国際資源学部や、地域性を生かして人文社会科学系グローバル人材を育成する長崎大学多文化社会学部、平成27年度には地域の課題対応という同様の観点がありつつ、「協働を通じた地域活性化を担う人材」に着目した高知大学地域協働学部と「国際社会や科学技術に関する総合調整に貢献する人材」に着目した山口大学国際総合科学部がそれぞれ誕生した。平成28年度には、さらに8学部が新設の予定である。特定の専門分野による学部ではなく、地域の特色や社会的課題と向き合う人材育成を目指し、芸術、地場産業、農林水産業、社会福祉、まちづくり等に着目した多彩なラインアップとなった。また、千葉大学では、日本発の文化や先端技術を理解し、国際課題の発見・解決能力を有するグローバル人材を育成する国際教養学部の設置が予定されている。なお、宇都宮大学、宮崎大学等では、地域の高等教育機関の事情から、廃止される教育学部の「新課程」がいわゆる事務系人材の重要な育成機関となっていたことを踏まえ、新学部においても人文社会科学分野を重要な要素としてカリキュラム編成が行われている。第3期には、これらにとどまらず、平成29年度以降も新たな学部や大学院、研究所等の再編が予定されている。こうした新たな学部のメリットは、これまでと異なる挑戦の場を提供してくれることにある。新たな場での刺激が全学的に影響を及ぼすことは必至であり、大学の創意工夫による今後の動きに大いに期待したい。4第3期のキーワードは「組織による経営力」文部科学省では、この6月に「国立大学経営力戦略」を発表した。ここで「経営力」という言葉を使用しているのは、第3期以降も国立大学がより一層活躍していくためには、“経営”の観点からも一定の自立性を確保することが必要であるためであり、これは国立大学の法人化が目指していたことをさらに実装していくために最も鍵を握ると考えたからである、と個人的には理解している。そして、「組織による経営力」を考えるうえでは、国との関係にとどまらず、「国立大学は社会と共にある」ことを考えなければならない。そのステークホルダーは国民全体といえる。我が国社会の活力や持続性を確かなものとするうえで、新たな価値を生み出す礎となる「知」とそれを担う人材が重要であることは論を俟たない。これらを生み出す大学において、これまでの蓄積を生かし、新しい時代の教育研究の形をどのように創っていくか。各国立大学は、英知を絞って頂きたいと考えている。社会が大きく変貌している現在、国立大学も「社会変革のエンジン」として「知の創出機能」を最大限に高められるよう、自ら変わらなければならない時期に来ていると言えよう。文部科学省は、平成25年11月の「国立大学改革プラン」の策定以降、各国立大学と共に、その強み、特色、社会的役割を踏まえながら、これからの時代の新たなニーズと真摯に向き合う国立大学を目指し、機能強化の取り組みを進めてきた。これらは18歳人口の減少が本格化する前に個々の大学が体力のある組織づくりを行うことでもあり、大学に存在する有望な“芽”を育てる教育研究の自由を戦略的に確保することにもつながる。そして、このような組織づくりは、「社会の力」を得た大学自身でしかなしえない。国立大学改革は、まさに第3ステージに入る。これからも、全ての国立大学が構想力を発揮し、主体的・戦略的な改革に取り組んで頂くことを期待しており、引き続き大学との丁寧な議論を重ねていきたいと考えている。

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