カレッジマネジメント195号
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53リクルート カレッジマネジメント195 / Nov. - Dec. 2015等が連携して、理工系の学部・大学院に進学する女子生徒・学生が着実に増加するように、長期的視野に立った取り組みを展開していく必要がある。トップの強い信念に基づく組織的・戦略的展開事務系職員については、職員数が抑制される一方で、業務量が増加し、担うべき機能も高度化する傾向にある。長時間労働の解消を含めた業務のあり方の大胆な見直しを行うとともに、職員一人ひとりの能力を高め、職員組織全体の生産性を大幅に向上させることが、教育研究の高度化、経営力の強化、女性活躍の促進のいずれの観点からも不可欠である。そのうえで、大学として職員に期待する役割を明確に示すとともに、個々の職員が自身のキャリアをどう描き、どのような形で大学に貢献したいと考えているかを丁寧に聴き、対話を通して大学の期待と職員の希望をすり合わせることも重要である。また、評価、処遇、昇進等人事面において客観性と公正性を担保し得る制度・運用を確立するとともに、ジョブ・ローテーション、OJT、研修等により計画的に育成できる仕組みを整える必要がある。大学の場合、教員・職員とも居住地変更を伴う異動の可能性は低く、業務の性格上、他の職種と比べると仕事と生活の調和を図りやすい条件にあると考えられるにも拘わらず、女性の活躍が進まなかった原因はどこにあるのだろうか。「日経WOMAN女性が活躍する会社Best100」で2014年と15年の2年連続総合1位を獲得した資生堂は、「男女共同参画を社員の活力を高めて成果を上げ続ける組織風土づくりに向けての経営戦略のひとつと位置づけ、企業にとって重要なステークホルダーである社員の企業に対する信頼感を高めることを目的として」(同社HPより)、2004年より女性支援を本格的に展開し、2015年4月時点の女性リーダー比率を27.2%まで高めている。トップ自らが「女性の活躍と多様性の尊重は活力ある組織や社会を作るうえで不可欠」との強い信念を持ち、具体的な行動を通して、その考えを社内に徹底するとともに広く社会に発信する。このようにして、資生堂をはじめ女性が活躍する先進企業は、ダイバーシティーを組織文化として定着させる努力を重ねている。大学の場合、教員の意識を含めて組織を一つの方向に向けるのは容易でない面もあるが、「知識創造の場であり、学びの場である大学こそ多様性を尊重すべき」との強い信念をトップが持ち、具体的な行動と学内外への発信を通して、その姿勢を示し続けていかなければならない。真のグローバル化は多様性の尊重なしに実現し得ないダイバーシティーは女性の活躍推進にとどまるものではない。人種や国籍の違い、年齢の高低、障がいの有無、雇用形態の違い等を受容し、「多様であることこそ活力と創造の源泉」との積極的な考え方に基づいて取り組んでいく必要がある。その中には前述したLGBT支援もある。学生がLGBTサークルを結成する大学も増えつつある。早稲田大学では、LGBT学生が困難や差別を受けることなく学生生活を送れる大学づくりを目指した「LGBT学生センターをつくる」が学生コンペで総長賞を受賞している。また、国際基督教大学は日英両言語の「LGBT学生生活ガイドin ICU」を作成し、トランスジェンダーやGID(Gender Identity Disorder:性同一性障害)等性的マイノリティとされる学生の支援に取り組んでいる。女性の活躍推進とLGBT支援とでは、社会の認識や理解に大きな開きがあり、後者は生活・文化や法体系のあり方にも関わる、より複雑な要素を有している。新たな制度設計等ソフト面の整備に加えて、ハード面での対応が必要な場合もある。LGBT支援に限らず、ダイバーシティーに本気で取り組もうとすれば、法令・政策・社会動向に対する理解、制度設計、きめ細やかな配慮等、大学の負担は増すことになるだろう。大学におけるダイバーシティーにはそれらを超えた意義と価値があること、真のグローバル化は多様性の尊重なしに実現し得ないことを教職員のみならず学生を含めて大学全体で共有することが大切である。【参考文献】国立女性教育会館・村松泰子編(2015)『実践ガイドブック 大学における男女共同参画の推進』悠光堂男女共同参画統計研究会(2015)『男女共同参画統計データブック−日本の女性と男性−2015』ぎょうせい

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