カレッジマネジメント196号
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26割であるが、それは社会と連携しなければ達成し得ない。このようなシビアな動機が、報酬型インターンシップの背景にあった。「学生は、70%までは学内資源で育てないといけないが、残り30%は学外資源で育てる。大学がやるべきことは、その30%の窓を開くことだろう」と山下学長は話す。もう一つ、学生の置かれた状況に即し、地域ぐるみで学生が育つ環境を用意するという点で注目されるのが、「地域連携住居」の事業である。これは、春日井市内の個人住宅や空き家を、学生が3人ほどでシェアできるような住居として用意する取り組みである。春日井市がニュータウンとして空き家が多いことも背景としており、地域にとってもメリットがある。たとえば家賃は1月2人で2万7800円ほど。この取り組みは、COC事業の「キャンパスタウン化」にも位置づけられる。大学近くに安価で暮らすことができる環境を用意すること、分野や関心の異なる学生間の共同生活で人間としての成長を促すこと、及び地域貢献をすることが同事業の狙いだ。「授業外学習時間の確保が求められているが、中部大学の学生の場合、自宅から2時間もかけて通っている学生も少なくない。近くに住めば、その分の時間を勉強や課外活動を通じた成長に充てることができる。自分達の学生が置かれている状況を理解して、学生が実践できる教育方針を示し、そのための環境を整えなければいけない」と山下学長は話す。学問の論理に根差すテーラーメイドの正課教育他方、大学を名乗る以上、正課教育において大事にしなければならないのは、あくまで学問の論理による教育であると山下学長は考える。「社会で生きていくためには、学問の論理だけでは難しい。けれども大学という学問の場で、学生が一生懸命に研究をして何か新しいことを生み出そうとすること、その過程で嘘をつかずに確かな手順を踏むやり方を身に付けることは、大学が外してはならない人材育成教育の鉄則であり、社会に対して負う大学の責務である」。同時に、学問の側も、現代の社会に即した切り口を常に作り出していかなければいけない。2014年度に工学部に設置されたロボット理工学科も、学問の論理を新しい切り口で示そうとする挑戦だ。「例えば、機械工学のようなディシプリンは、300年近くかけて生み出された、重要でゆるぎない価値を持つ。しかし、個々のディシプリンは、歯車に相当するもので、社会的なニーズに応えるためには、歯車と歯車を組み合わせ、構造物としての出口を与えなくてはいけない」(山下学長)。もう一つ、現代における学問の論理は、学生個々の課題に即した枠組みが必要であるという。それを体現するのが、経営情報学部、国際関係学部の改革だ。経営情報学部、国際関係学部では、2016年4月より、それぞれ従来の3学科を統合した新たな学科として「経営総合学科」、「国際学科」をスタートさせる。経営総合学科、国際学科では4年間を通じた少人数教育の下、学生一人ひとりの意欲や関心に応じた学修環境が用意されている。特筆すべきは、卒業論文指導のシステムである。総合経営学科、国際学科の卒業論文指導では、指導教員のテーマに合わせて学生が卒論ゼミに配属される従来のシステムではなく、学生が希望する卒論テーマに合わせて指導チームを作るという新たなシステムが採用される。「教員に学生が合わせるのではなく、一人ひとりの学生の関心に合わせて、教員の学問を組み合わせるという仕組み。テーラーメイドの教育と呼んでいる」。多様な学生の多様な希望を、取りこぼすことなくすくいあげようとする理念が、ここにも生きている。時限付き戦略室の機能と効能中部大学の挑戦的な教育事業、学生支援事業を支える仕組みとして注目されるのが、時限付きで設置される戦略室の機能である。中部大学の戦略室は、時々の課題に応じて切れ目なく設置されてきた(図表3)。中部大学の改革は、学長を室長とするこれらの戦略室が大きな枠組みを提示し、その後に恒常的な組織が具体的な事業を組み立てていくというやり方で進められてきた。例えば、報酬型インターリクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 2016図表3 近年の戦略室・特別委員会の展開2008.04~2011.03アドミッション戦略室※前年に実施の「入学生安定確保特別年間」の活動を 受けて、入学生安定確保を目的として設置2011.04~2012.03ディプロマ戦略室2012.04~2013.03学生支援戦略室2013.04~2014.03国際交流戦略室2015.04~アドミッション戦略室※高等教育政策等、入試制度改革、全国情勢・将来 予想を受けて設置

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