カレッジマネジメント196号
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56リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 2016「研究室にもほとんど来ていない」といった話は、程度の差こそあれ、どの大学でもあるだろう。結果として、改革が教員間の貢献度の違いを一層拡大させることになる。そのことが、組織全体の士気の低下や相互信頼に基づく協働の困難化をもたらす可能性もある。大学の実情に即した活性度の高い職員組織づくり職員については、業務領域の拡大と業務の質的高度化が進む中、人件費抑制や定員削減、多様な雇用形態の職員による協働等が常態化しつつある。その中でよく聞くのは、「上位役職者や年輩者が保守的」、「新しいことを手がけようとすると余計なことはするなと言われる」、「現状のまま決められたことを処理すればよいと考えている人が多い」等である。これらは設置形態の違いを超えて共通して聞かれる言葉だが、私立大学の場合は大学間で職員組織の体質にかなりの違いがあるように思われる。創設以降の経緯、規模・特色・学部構成・立地、選抜性の高さや競争状態等、様々な要素が複合して組織風土や体質が作られるが、ある時期に教員と職員が協働して、あるいは職員が主導して、新たな施策に取り組み、それが大学にとって望ましい成果に結びついた経験を有する大学ほど職員組織の活性度が高いように思われる。国立大学では法人化後、従来の国家公務員採用から国立大学法人等職員採用試験などを経て法人ごとに採用する方式に変わり、選抜性の高い大学や自校の卒業生が数多く採用されてきたが、国家公務員時代から続く配置・育成の考え方や方式を抜本的に変革した大学は見当たらない。法人化以降の職員に何が期待され、どうすれば評価されるのか、どのようなキャリアパスが示されているのかは、依然として曖昧なままである。その中でも努力を重ねている職員は多いし、法人化以前に就職した世代でも意欲・能力が高く、改革を主導する職員も少なくないが、セミナーで私立大学の職員と一緒に学んだ国立大学の職員が「自分の大学を良くしたいと頑張っている私立大学の職員が羨ましい。国立大学の職員組織の実態はあまり変わっていないし、変われそうにない」と語った言葉が重く響く。一つの発言に過ぎないが、現状を言い当てているように思われる。配置・育成と仕事の仕方の両面からの職員組織改革を加速させないと、定員削減が進む中、既存の仕事で手一杯の状態が続き、活性度を一段と低下させてしまう可能性がある。職員組織の活性度は規模に左右されることもある。公立大学は一部を除き総じて小規模であり、職員組織も数十人にとどまる大学が多い。私立大学も事務系本務職員だけに限れば、1校当たり平均100名に満たない。そのため、特定の職員が一つの仕事を長期間担当し続けるという状況が生じやすい。また、小規模であっても機関として求められる機能や業務があり、少人数であるが故に新たな取り組みに割く時間も限られる。小規模であるが故に、大学全体を見やすく、一体感も醸成しやすいという利点もあるが、上記の課題を克服するために、個々の大学の枠組みを超えた業務の集約や人材育成の仕組み等も検討する必要もある。大学を取り巻く状況と課題経営力の強化(経営資源の獲得と高度活用)教育研究の高度化、質保証、社会への説明大 学危機的財政状況家計の悪化18歳人口の減少グローバル化イノベーション職業能力向上地方創生良き市民社会の形成より良き生き方の追求知識の創造

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