カレッジマネジメント196号
56/60

加型の授業が行える教室や、個人や集団で自主学習ができるプロジェクト企画スペースを造り、学部の授業は全てここで実施するよう切り替えた。環境だけでなく、文部科学省の事業にも採択された「Active-Learningと質保証システムを取り入れた産学連携による次世代ハイパーエンジニア養成プログラム」をてこに、研修や教材支援など先生方が教え方を変えていくための支援も行い、転換を推進している。地域という観点では、「地元に必要な人材を地元で育てる」という考え方のもと、大学と企業が連携して教育を行っている。学生に対しては、理論と実践の間を行き来できるよう、教養や専門科目と並行して「創造」や「ものづくり」という名のつく実践的な授業を産学連携で提供している。例えば1年次の「創造工学入門ゼミナール」では、富山県の機電工業会に所属する企業のトップクラスの人達に授業を受け持ってもらうことで、学生に早期から実践のイメージを持たせ、勉強や研究に対する動機づけをしている。また、社会人に対しては「次世代スーパーエンジニア養成コース」を提供しているが、ここでも企業の上級技術者が教える側となり、ライバル企業も含めた若手技術者の学び直しを支援している。大学がハブになるからこそできる人材育成の形だ。これらの授業も、この新しい総合教育研究棟で行われている。今後の課題としては、この新しい教育環境で行われる能動学習や、地元企業と共に行う実践的な教育の質保証だという。ルーブリック設計を入れて、教員・学生・企業講師の相互評価等により質の保証を行っていくことを考えている。教育環境の整備に加え、カリキュラムの中身や質保証などの改革を次々に進めている堀田学部長だが、将来の構想はこれに留まらない。「理工系の組織再編で、システムデザイン系の新学部の設立を構想中です。材料工学・地学・土木といったハードと都市計画といったソフトを融合させた、新しいコンセプトの学部学科を創りたい。そのためには、この総合教育研究棟のような新しい教育設備をもう1棟欲しいと考えています。」特長であるものづくり教育を基盤に、地元の産業界と共に富山大学がどのような人材育成を行っていくのか、今後のさらなる進化が楽しみだ。(本誌 林 知里)富山大学は、学生数約8000人、文科系4学部及び理科系4学部を抱える国立の総合大学。なかでも工学部は、今年設立70年を迎えた歴史ある学部だ。この節目の年に、メインキャンパスである五福キャンパスに新たに完成したのが、「総合教育研究棟(工学系)」。狭隘や断層の存在がきっかけになったという新棟の建設だが、そこには工学部がこれから目指す新しい教育へのチャレンジが形になって顕れている、と堀田裕弘工学部長。「地方にある国立大学のミッションとして富山大学の工学部が目指しているのは、『地域を活性化する、ものづくり教育』。そのために、カリキュラムと教育環境の改変を並行して進めてきた」。新しい総合教育研究棟には、まさにこの“ものづくり”と“地域”というコンセプトが色濃く反映されている。ものづくりという観点では、与えられた課題を解決できるだけではなく、自ら課題を発見し問いを立てられる人材、そして、何が良くて何が悪いのかの違いが分かる感性を持った人材を育成したいという。そのためには、従来型の受動的な授業から、学生が主体となるアクティブラーニング型の授業に変換していかなければならないという課題感があった。総合教育研究棟には、一般教室のほかにクリエーションスペース、イノベーションリサーチ室といった学生参60リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 20163F屋上の開放的なテラス。建物内にテラスや中庭などのコミュニティースペースを設けることにより、教職員・学生間のコミュニケーションの活性化を促す。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 56

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です