カレッジマネジメント197号
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43このような人材を育成するために設計されたのが、後に詳述する地域貢献人材育成入試を通じて入学する学生を対象としたCOC人材育成コースだ(図表1)。同コースは、ベースストーン(BS)科目とキャップストーン(CS)科目を中核として構成される。BS科目は「地域を知る」ことを目的とし、主に1、2年生を対象とした教養育成科目を中心として、地域の基礎的な現状と課題について学習できる導入科目によって構成される。CS科目は主に各学部の専門科目で構成され、「地域に挑む術(すべ)」を学ぶことを目的とし、地域に関するより高度な知識を学ぶと同時に、学部の専門教育科目において修得した知識を活用した課題解決の手法や視座について学ぶ科目によって構成される。BS科目、CS科目ともに、各学部の専門教育科目に該当するものについては所属学部以外の科目は履修できないが、「地域課題解決プロジェクトA・B」という全学部の学生を対象とするCS科目を新設するなど、学部を超えた多様な学生が協働しつつ学ぶ場も確保されている。なお、これらの科目の履修は、BS科目とCS科目それぞれを2単位から4単位ずつ、合計6単位以上の履修がコース修了の条件とされている。コースを修了した学生には、各正課内外にわたるCOC人材育成コースの設計正課内外にわたるCOC人材育成コースの設計学部・学科において一定の専門性を身に付けつつ、それぞれの専門性を活用することによって地域社会に貢献できる人材となることを期待しているという。以上のコース全体の設計は、一朝一夕に作られたものではない。島根大学では、2013年度に「課題解決型(PBL)による地域協創型人材養成」というテーマでCOC事業に採択されて以来、地域課題学習支援センターを設置し、同センターを中核として自治体や産業界、NPO、地域社会と連携しつつ、地域を志向するPBL等に取り組んできた。例えば、地域に関する科目を科目数だけで見ても、COC事業採択2年目(2014年度)にはBS・CS科目の合計は100科目、3年目(2015年度)には130科目を超えるなど、着実に進化を遂げている。このように、COC人材育成コースの実現は、地域に根ざした島根大学の歴史とCOC事業に採択されて以来の継続的な取り組みの賜物であるといえる。他方で、COC人材育成コースの特徴は、学びの場が正課にとどまらない点にある。服部学長は、「(コース履修の最低要件である)6単位というのは、あくまでも仕掛けに過ぎない。そこから学生が自主的に何をやるか。それが重要だ」と強調する。もちろん、それは無責任な放任主義ではない。COCセミナーと総称される正課外における学びの場や、各種インターンシップの機会の提供、その他の正課外活動の支援等、学生の主体性を尊重しつつ、授業科目における学びを発展させる環境が整えられつつある。これらの支援体制の整備のため、前述の地域課題学習支援センターを発展的に改組し、2015年10月1日に地域未来戦略センターを設置している。地域への想いを評価する、地域貢献人材育成入試それでは、地域貢献人材育成入試とはどのような入試なのか。服部学長によれば、同入試において重視する志願者の資質・能力とは、「地域への想い」であるという。島根県には、人口減少や過疎化、高齢化等、解決すべき様々な課題(challenge)が存在する。それらの課題に挑戦(challenge)しようとする意欲のある学生を選考することを目的としているのだ。大学としては、各学部に募集定員を割り振ったうえで、学リクルート カレッジマネジメント197 / Mar. - Apr. 2016特集 相互選択型の入学者選抜へ図表1 COC人材育成コース カリキュラム

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