カレッジマネジメント197号
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49星長学長の“私立大学なのだから、新しいことをやりなさい”という一言だった」と金田副学長は話す。星長学長は、慶應義塾大学医学部の卒業生。藤田保健衛生大学に赴任したのは1989年で、藤田保健衛生大学病院の病院長等の経歴を経て、2014年に学長へと就任した。星長学長は、学長としての姿勢・役割について次のように話す。「自分自身、私立大学の出身ということもあり、国公立大学にはできないことをやらなければいけないという思いがある。学長になってからは特に、良いと思ったことはやりなさい、と教職員に呼びかけてきた。ただ、学長としての役割は、大きな方針を考えることと、その実現に必要な学外との調整により環境を整備すること。具体的な実現方法や形は各部局の議論に任せており、アセンブリ入試は医療科学部が知恵を持ち寄った成果にほかならない」。星長学長の積極的な姿勢に、学内構成員が呼応した結果、地域包括ケア中核センターの設置や、北京大学・ジョンズホプキンズ大学との連携等、医療の未来を見据えた様々な挑戦的な取り組みが、短期間のうちに実現した。「星長学長の下、新しい時代に向けて本学の理念を具体化する作業が、凝縮された期間の中で進んでいると感じる」と金田副学長は話す。これら密度の高い改革の推進は、星長学長が就任直後に整えたガバナンスの仕組みによって支えられている(図表3)。当時、文部科学省の教育改革支援事業に関わる諸条件を満たしていなかったことも、組織改革のひとつの背景となった。以前には設置されていなかった副学長職を新たに設けるとともに、優秀な職員によって構成された企画部を学長直下に新設。さらに、教授会に左右されない教職協働の各種委員会を企画・実働組織に据え、改革の加速を図った。これら各種委員会の委員長は学長補佐が担当するが、メンバーには若い世代の教職員を積極的に登用することで、当事者としての責任感の育成にも一役買っている。「若手の教員に、具体的な企画の具申を任せることが、当事者意識の喚起につながった。また委員会メンバーとして事務職員が加わることで、改革事業全体の進捗がスピードアップした」と金田副学長は話す。学長が示した大きな方向性を、具体的な行動に落とし込む体制作りが、未来の大学を担う若手を中心に進んでいると言えるだろう。「企画部や委員会には優秀な人が集まった。藤田保健衛生大学の変革は、彼らの力によるものだ」と星長学長は話す。新しい時代を担う人材の選抜・育成へ藤田保健衛生大学のアセンブリ入試は、創設者が掲げた先進的な医療人育成の理念を、現代的・将来的な課題を見据えて具体化するための挑戦の一つであった。アセンブリ入試を含む、新しい時代を見据えた挑戦は、星長学長が示した積極的な姿勢と、劇的なガバナンス改革を背景に、若手を中心とする構成員の活躍の下、加速度的に実現に移されてきた。「本学の自慢は、その先進的な理念にある。この時代を超えて揺るがない理念を、現代の課題と、医療の未来に向けて具体化していくこと。そのために良いと思うことには、ためらわず挑戦していかなければならない」と星長学長は話す。藤田保健衛生大学の掲げる「獨創一理」の理念、アセンブリの精神を備えた人材は、今日の医療現場において、ますます必要性を高めている。新しい時代の医療を担う人材の選抜、育成、輩出に向け、藤田保健衛生大学の伝統と挑戦が、さらなる飛躍を遂げることが期待される。リクルート カレッジマネジメント197 / Mar. - Apr. 2016(丸山和昭 名古屋大学高等教育研究センター 准教授)図表3 全学教学マネジメント改革の推進体制企画小委員会理事会 教務委員会学部長教育企画室教授会教育課程、入試等の承認各学部特集 相互選択型の入学者選抜へ国際交流推進センター学長補佐地域連携教育推進センター学長補佐産学連携推進センター学長補佐研究支援推進センター学長補佐教育の質改革WG学長補佐IR委員会学長補佐企画部藤田保健衛生大学全学教学運営委員会(委員長:学長)学長、副学長、学長補佐、学部長、教育病院長、事務部長、企画部長等

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