カレッジマネジメント197号
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56高等教育の8割を担う私立大学は、建学の精神に基づいた特色ある個性豊かで多彩な教育を実施することで、多様な人材を輩出し我が国の発展に大いに貢献してきた。しかし、長引く少子化の進行等により、私立大学の経営環境はますます厳しさを増している。このような環境において、今後も私立大学がこれまで以上に特色ある多様な教育に取り組み発展し続けていくためには収入の多様化を図ることが不可避であり、その一方策として寄付金の獲得に努めることは、今後の重要な課題であると認識されている。しかし、私立大学の収入構造は長年、学生納付金、補助金及び手数料でその約9割を賄う状況であり、2014年度決算の状況を見ても寄付金収入はわずか2.6%に過ぎない。この傾向は、近年5年間の推移を見てもやはり大きな変化は見られず、私立大学における収入の多様化が進行しているとは言い難い状況だ。私立大学をはじめとした私立学校に対する寄付金はどうして伸びないのだろうか。その理由のひとつとして、私立学校に対する寄付金には、特定公益増進法人に対する寄付金以上の税の優遇措置はないと思われているということが考えられる。つまり、私立学校に対する寄付金にも、国や地方公共団体等に対して寄付をした場合と同じように、寄付金の全額が損金の額に計上できる制度が存在しているということが、意外なほど知られていないということだ。その制度が、日本私立学校振興・共済事業団(以下私学事業団)の「受配者指定寄付金制度」である。私学事業団の受配者指定寄付金は所得税法及び法人税法の規定に基づく財務大臣の指定(昭和40年4月30日大蔵省告示第154号)を受けている寄付金のため、私立学校に対する寄付金も、この制度を利用すれば寄付額の全額が損金の額に算入できる。さらに、現在この制度では私立学校の資金必要時期に拘わらず常に寄付金を受け入れることが可能となっており、寄付者の事情に合わせて寄付金を支出することが可能であることから、寄付者にとって大変メリットのある制度となっている。この制度は、寄付者が、寄付金の受取先となる私立学校を指定して(実際には私立学校を設置する学校法人を指定して)私学事業団に寄付をする制度であり、受け入れた寄付金は私学事業団から指定された私立学校に配付される。なお、この制度の利用にあたっては手数料等も一切不要であり、私立学校が直接寄付金を受け取った場合と同様に寄付者からの寄付金の全額を教育や研究の費用に充てることができることから、寄付金の最終的な受け取り額に差異は生じず、私立学校にとってのデメリットもない。私立学校に対する寄付金には、直接寄付金を受け入れた場合に、特定公益増進法人に対する寄付金としての税の優遇措置が設けられているが、多数の特定公益増進法人が存在しているなかで、私立学校がこの税の優遇措置を寄付者メリットとして掲げたとしても、多くの寄付金を獲得することは容易ではない。受配者指定寄付金制度は、私立学校に対する寄付金としては寄付金の全額が損金となる唯一の制度であり、この制度を活用することで、より優位に寄付募集に取り組むことができる。寄付金の募集にあたっては、募金活動に有効なこの「受配者指定寄付金制度」の活用もぜひご検討頂ければ幸いである。リクルート カレッジマネジメント197 / Mar. - Apr. 2016私立大学の寄付金獲得を支援する、「受配者指定寄付金制度」日本私立学校振興・共済事業団 助成部寄付金課猪股賢一寄 稿

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