カレッジマネジメント197号
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58リクルート カレッジマネジメント197 / Mar. - Apr. 2016私学事業団としても、私立学校の寄付募集に資するためこの制度の広報活動に取り組んでいくが、近年は私立学校の方々や寄付をしようとする方からの問い合わせも確実に増えている。こうして受配者指定寄付金の金額や件数が増加している理由には、私立学校の方々の寄付募集に対する取り組みの努力や関係者の尽力による制度改善への取り組み等が大きく影響していることは明らかだ。また、私立学校の方々からだけではなく、税理士や会計士、企業の方々からの問い合わせも多く、この制度への関心の高さを感じており、私立学校の方々の努力との相乗効果により、今後も受配者指定寄付金は増加するのではないかと期待しているところである。受配者指定寄付金の活用事例【金沢工業大学】地域との「産学連携教育」を推進する仕組みとして、プロジェクトに組み込み受配者指定寄付金は、主に企業等法人からの寄付金を対象としている。私立学校が取り組む特色ある多彩な教育や研究の取り組みは、人材育成やイノベーション等の観点からも多くの企業等から注目されている。また地域社会との連携を図るうえでも、関係する多くの企業等が存在することから、こうした取り組みを支えるひとつの仕組みとして寄付金を募る方法がある。多くの私立学校がこうした取り組みを実施しているが、ここでは、金沢工業大学の取り組みをひとつの事例としてご紹介したい。金沢工業大学には、学園が将来にわたって「社会にとって必要とされる学園」、「学生にとって魅力ある学園」であり続けるための教育研究充実計画として、工学アカデミア計画がある。この工学アカデミア計画では、学術研究や教育の充実・発展を目的とする寄付金の募集に取り組んでおり、その支援によって社会に貢献する教育研究の推進に努めている。その事業のひとつに「夢考房プロジェクト事業」がある。この「夢考房プロジェクト事業」は、学園の教育目標である「自ら考え行動する技術者の育成」を実現するための不可欠な教育実践のひとつに位置づけられており、金沢工業大学と企業による「産学連携教育」を重視するなかで、学生は学内や企業で学んだ成果を具体化し、それを後輩に引き継いでさらに後輩が学ぶという新たな価値を創造する斬新な教育プログラムだ。金沢工業大学は、このプロジェクトに取り組む学生を応援するための寄付金を積極的に募集しており、この事業に対する寄付者が企業等の場合には、受配者指定寄付金として取り扱っている。金沢工業大学の受配者指定寄付金の利用状況を見ると、地元の企業を中心に、大変多くの企業から寄付金を獲得しており、2014年の受配者指定寄付金では90件の寄付金を獲得しているが、そのほとんどが地域に関わる企業であることからも、掲げた理想通り、地元の企業からの応援というかたちで金沢工業大学へ寄付が集まっている状況が見てとれる。こうした取り組みは、地域企業をはじめとしたステークホルダーにより私立学校の活動が支えられていることの証である。地域企業等ステークホルダーに私立学校の特色ある教育研究の取り組みを知っていただき、さらに私立学校の取り組みに対する応援の輪が広がるという好循環を生み出すことができれば、寄付金はさらに拡大するのではないだろうか。私学事業団としても、私立学校の特色ある教育研究の取り組みと寄付金の関係については、今後も注目していきたいと考えている。私立大学の寄付金獲得を支援「受配者指定寄付金制度」の主な要件や対象となる事業等は以下に記す通りだが、利用に関する相談については、ぜ図表3

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