カレッジマネジメント197号
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73リクルート カレッジマネジメント197 / Mar. - Apr. 2016ラーニング・コモンズでそれを他者と共有、5・6階の講義室でさらに学修を発展・進化させていくといった具合に、全館の設備が推進したい学びのサイクルそのものになっているのだ。施設の中で特徴的なのは、日本最大規模の85万冊をICタグで管理する自動書庫だろう。学生は館内各所に設置されている自動貸出機から、IC学生証を利用していつでも簡単に本を借りることができる。これにより利用者の時間を節約し、学修に充てる時間を多くすることを狙っている。また、機械化・自動化で書架スペースが削減されたことで、図書館の座席数は収容定員の約15%に当たる1040席を確保することもできた。ラーニング・コモンズは、グループワークやプレゼンテーションなど様々な形態の学修環境に加え、プロジェクタやホワイトボード、模造紙のほか電源も自由に使え、飲み物の持ち込みもOK。学生が8時間滞在することを前提に、建物4階にはカフェ、隣接する朔風館には食堂も併設するなど、利用しやすさを追求した設計となっている。さらに、学修をより有意義なものにするための仕組みや工夫も行われている。その一つが、授業外学修まで含めたシラバスの設計だ。単位の実質化を図るには、1時間の授業に対して2時間の授業外学修が必要である。そのため、授業だけではなく予・復習を含めた形で学修指導書を兼ねたシラバスを用意。時間割も、授業間にできるだけ空きを作り、その時間を授業外学修に充てられるよう設計されている。また、この場で出てきた疑問はすぐに解決できるように、アカデミック・スキルズのサポートを中心とした専門スタッフが常駐している。利用開始から半年、図書館の利用者は2.2倍、貸出冊数は1.5倍に。ラーニング・コモンズも連日多くの学生で賑わい、人気の設備は予約しないと利用できないほどだ。活用が進んだ理由を大学は、「この建物ができたことで、学生は自分たちは大学から大切にされている、思い切り学ぶことを奨励されているという自覚を持ったからではないか」と見ている。大学の様々な仕掛けや工夫を学生が自分自身のものとして受け取ったからこそ、積極的に活用し始めているのではないかと。今後は、この学修空間を利用し、アクティブ・ラーニング導入授業を現在の2割から4年以内に8割まで高めていく予定だという。また、英語に特化したアクティブ・ラーニング施設を来年4月にオープンする計画だ。玉川大学の、大学教育の質保証に向けたチャレンジの成果に、今後も注目していきたい。(本誌 林 知里)玉川大学は、文・理合わせて8学部17学科に7500人が学ぶ総合大学。その正門を入ったところに昨年4月にオープンしたのが、「大学教育棟 2014」と「朔風館(食堂棟)」だ。コンセプトは、「学生が1日8時間滞在し、快適に学べる空間」。ここには、玉川大学の理念と、目指す教育への強い思いが込められている。玉川大学は、2011年度に策定した「Tamagawa Vision 2020」をもとに、大学教育の質保証に取り組んできた。基盤となったのは、大学設置基準で求められている単位の考え方の遵守だ。授業と授業外学修を合わせて1単位45時間の学修時間が定められており、4年間で124単位取得するには1日8時間の学修が必要となる。また、学問の高度化や産業構造の変化を背景に、教育理念として“21世紀社会を支える高次汎用能力を備えた人材育成”を掲げ、アクティブ・ラーニング等を活用した学生の主体的な学修を促進してきた。これらの実現のためには、学生が主体的に学修できる・したくなる環境をつくることが必要と考え、「大学教育棟 2014」を建設した。学内で最大規模となったこの建物は、いくつかの機能の複合施設となっているが、そのゾーニングは周到に設計されている。1・2階の個人学修用スペースで集中して自学自習し、3・4階の「大学教育棟 2014」と渡り廊下で結ばれた「朔風館」には、学生食堂やテイクアウトができるカフェを併設。

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