カレッジマネジメント198号
31/66

31リクルート カレッジマネジメント198 / May - Jun. 2016(望月由起 昭和女子大学 総合教育センター准教授)学制度がある(図表4参照)。高校3年間で一定の学習成績を修め、「英語」「情報」「会計」等の資格※を取得することにより、連携大学への入学につなげている。例えば、関西大学商学部及び関西外国語大学英語国際学部には、それぞれ20名の特別入学制度枠があり、校内選考により進学できる。こうした特別入学制度とは異なるが、連携している大阪市立大学の商学部には、大阪市内の専門学科高校生対象の推薦入試制度を利用して受験することが可能となっている。その結果、一期生である2015年卒業生は、大阪市立大学7名、関西大学20名、関西外国語大学4名、京都産業大学5名、桃山学院大学4名、計40名が連携大学に合格している。2016年卒業生(二期生)は合格者がさらに増えており、大阪市立大学5名、関西大学15名、関西外国語大学12名、京都産業大学5名、桃山学院大学9名、計46名に達している。国立大学や地元大阪の私立大学にも多くの合格者を出すなど、OBFの教育内容は連携大学以外の入試にも十分対応できるものであり、2015年卒業生の7割以上が大学等へ進学している。とはいえ、「大学に何人入れたかではなく、社会に出たときに強い職業人になっているか。そのための教育を高校と大学で一緒に考えることが大切」と澤井校長は語る。大学進学後の状況にも目を配るが、関西大学に進学した学生達は、入学後もトップクラスの成績を維持しているという。高大連携7年間での学びの深化、先鋭化を目指してこうした制度は、大学での学びを普通科の高校卒業生とは異なる高いレベルからスタートさせ、進学後の大きな成長も期待できる。今後さらに広がりをもたらすべく、継続して検討しなければならないが、スリム化やスクラップ・アンド・ビルドも必要であると澤井校長は考えている。OBFの次なるステップに向けての課題の一つとしても、「高大連携7年間での学びの深化、先鋭化」が挙げられている。今後、連携先大学数の拡大と受け入れ可能数の拡大は急務であるが、現在連携している大学でも、具体的な進学後の専門性の深化、先鋭化が約束されている大学もあれば、カリキュラム部分の連携はこれからという大学もあるという。そういったことを検討する場として、OBFでは、大学との共同研究体G-BEL(グローバルビジネス教育研究所)を連携4大学と開設している。このG-BELの活動の継続を担保する組織作りを通じて、連携大学との連携内容の常時見直し体制を構築する必要があるという。参加者のスケジュール調整が難しいこともあり、昨年度は1回の開催にとどまっているが、「高大連携7年間での学びの深化、先鋭化」にむけて、高校と大学が直接コミュニケーションをとり、具体的な議論もできる貴重な場であるため、より一層の充実が期待される。先進的な高大連携プログラム制度が目を引くOBFだが、「生徒にどのような力をつけたいのか、そのためには、連携プログラムも含め、いかなる授業改善が必要であるか」を追求する姿勢があってこそのものであろう。澤井校長は、こうした意識を教職員で共有し続けるべく、職員会議の度に「校長室より」と題したプリントを作成し、OBFのコンセプトや教育目標等の確認を重ね、関連する教育政策等の話題提供も行っている。こうした姿勢は、大学において様々なプログラムに当たる際にも重要ではなかろうか。澤井校長からは最後に、「大学の人材育成機能に期待し、高校教育で育成した生徒のビジネスや会計への興味や意欲を、そこへうまく引き継いでいきたい」という言葉を頂いた。ともに若い人材を育成する教育機関として、大学においても高大併せた視点で学生の育成を考えていくことを、高校側から求められていることを忘れてはなるまい。※大学により取得しなければならない資格は異なるが、「英語」であれば「実用英語技能検定(STEP)」「全商英語検定」「TOEIC®テスト」等、「情報」であれば「ITパスポート」「全商情報処理検定」等、「会計」であれば「日商簿記検定」「全商簿記実務検定」等が挙げられている。連携大学学部特別入学制度枠入学者数2015年度(一期生)2016年度(二期生)大阪市立大学商学部※75関西大学商学部202015関西外国語大学英語国際学部20412京都産業大学経営学部555桃山学院大学経営学部20494046図表4 特別入学制度等を利用した連携大学への入学者数※大阪市立大学は専門学科高校生対象の推薦入試制度を利用特集 高大接続改革への「高校の挑戦」

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 31

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です