カレッジマネジメント199号
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35力や志向が幅広い入学者にどう対応するかという点があろう。熊本学園大学の場合、多様な入学者に対応し、学生それぞれの力を伸ばすやり方を工夫している。まず、学部ごとに、入学前から目的意識が高い学生のための学科を設置している。商学部のホスピタリティ・マネジメント学科、経済学部のリーガルエコノミクス学科、社会福祉学部のライフ・ウェルネス学科がそれだ。特定の業界への人材輩出を前提とし、丁寧な指導を行えるよう少人数の定員で学科を設計し、より専門的に指導を行っている結果、他学科と比べ目的意識に沿った高い就職率を誇る。また、公認会計士や税理士を目指す会計専門職コースで学び、同大学大学院に設置されている、九州唯一の会計専門職大学院へ進学する進路も用意している。このルートに関しては、同窓会の税理士・会計士支部もサポートしている。一方で目的志向が弱かったり、学生生活になじめないような学生に対しては、手厚い支援体制がある。地元高校の校長経験者等で組織された教育センターが注力するのは、学生の「居場所」作りだ。自分の居場所がない学生は、大学に来なくなってしまうこともある。友人や教員等、日常生活の人間関係以外の第三者とつながりを持っておくことで、困ったときも行き詰りにくく、大学が身近な場所になっていく。職員の役割は非常に大きい。1年次の学生には1対1の個別面談を実施しているほか、来学を促すために始まったのが「マイレージ制度」。課外活動やボランティア活動等、様々なチャレンジに対しポイントを付与し、主体的で活発な活動を奨励するもので、来学やサークル加入もポイント対象となり、ポイントに応じた評価や報奨を設定している。まずは大学に足を向け、自ら動き出すためのきっかけとなる仕掛けを、教職員が主体となっていくつも考案しているという。学生部に設置された「なんでも相談室」では、学業・サークル・留学・今後の進路や適性等について職員にいつでも相談できる。こうした体制を敷いても、自ら赴くことに抵抗を感じる学生もいるが、スクールソーシャルワーカーが家庭訪問を行う等、アウトリーチも含めて学生の面倒をみる体制を敷いている。今年4月からは、社会福祉学部の教授が中心となり、「インクルーシブ学生支援センター」が立ち上がった。包括的にしょうがいを持つ学生の支援を行い、健常者と一緒に学べるように支援するものだ。国公立では義務化されている内容だが、私学ではかなり先進的な動きだといえる。全体を通して、「入学時点の目的意識や学力、しょうがいの有無等で差別することなく、多様性を大切にして、それぞれに合った成長支援の仕組みを考えている」と幸田学長は話す。教育における地域連携については、今年から「地域中核人材育成プログラム」が始まった。所属学部学科とは別に、週に90分授業が2コマ課される正課外プログラムだ。プログラムでは、地元企業でニーズの高いスキルとして、英語・簿記会計・ICTの3要素を体系立てて学ぶことができるほか、地元経済界の著名人の講演やインターンシップ、ビジネスプレゼンテーション等、地元企業・自治体・NPO等で活躍するために必要な知見やリーダーシップを身につける教育が、多岐に渡って行われる(図表2)。選抜は入学前と入学後の2回行われた(定員は各20名程度)。入学前選抜については、AO入試区分の特別入試で実施された。まずは説明会に出席した後、希望学科の先生と面談を行い、学科のカリキュラムと折り合いをつけられるかを相談する。特に教職や国家資格取得を目指す学生は両立が厳しい可能性もあるからである。その後の小論文と面接で、地域で活躍する「意欲」を見極め、合格後は、半年間特別育成プログラムにて、入学準備を行う。合わせて入学金相当額の教育支援金給付、各種資格検定試験料地域に根差した特色ある教育リクルート カレッジマネジメント199 / Jul. - Aug. 2016図表1 2014年度県内企業経営者最終出身大学一覧2位3位1位熊本学園大学253183109熊本大学日本大学4位5位6位7位8位9位 9位87806765625656福岡大学崇城大学明治大学中央大学東海大学慶應義塾大学旧九州東海大学(くまもと経済発行の『週刊経済』 2015.6.2号より)特集:地学地就の教育

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