カレッジマネジメント199号
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38現在のような、先を見通すこともおぼつかない状況下で、生き抜いていくための力を学生にいかに身につけさせるかは、言い古されてすらいる課題だ。いま、殊更に言い立てる必要はないかもしれない。しかし、地域と向き合い、学生の力を伸ばすことに取り組んできた東北公益文科大学を見ていると、この問題を新たな気持ちで受け止めることができる。本稿で取り上げる東北公益文科大学は、2001年に庄内(図1)は酒田の地に開学した。山形県並びに14市町村(当時)の財政支援を得て設置された、いわゆる公設民営の大学だ。それまで高等教育機関がこの地にはなく、悲願の末に設置された大学である。また、日本で唯一の公益学を扱う大学でもある(刊行現在)。複雑な社会の中で生きるすべをただ教えるのではなく、むしろその社会にどう益するか(公益)を教える大学なのである。地域に待望されてスタートを切り、地域社会に資する人を、地域社会の力を借りて育てていく。まさしく本特集で取り上げるのにふさわしい大学だということがおわかりいただけたのではないだろうか。取り上げる理由は、他にもある。地(知)の拠点整備事業を始めとして、東北公益文科大学が獲得してきた外部資金は極めて多い。また、18歳人口減の煽りを受け、東北公益文科大学も学生数の減少に見舞われたが、2013年度を境に増加基調に転じている(図2)。この背景には、何があるのだろうか。実態に迫るべく、東北公益文科大学酒田キャンパスに、吉村 昇学長を訪ねた。同大学は、公益学部公益学科2系5コースを擁する単科大学である。地域経営系には経営、政策、地域福祉のコースが、交流文化系には国際教養、観光・まちづくりのコースがある。同大学の教育上の特長は二つある。一つは、総合的なアプローチを採っていること。もう一つは、地域に出る、ということである。同大学のカリキュラムはかなり高い柔軟性を備えている。1年生の4月に系を選ぶが、2年生以降でも系の変更は可能である。また、2年生でコースに分かれた後も、系やコースを超えて学べる仕組みになっている。卒業に必要な単位の指定も、コースで何単位ではなく、所属の系から所定の単位を取ることになっている。例えば、地域経営系の経営コースで学んでいたとしよう。学びが進むにつれて、経営コースの科目を多く取って経営学を深く掘り下地域に根差した柔軟なカリキュラムリクルート カレッジマネジメント199 / Jul. - Aug. 2016庄内で地域課題に取り組み、その成果をそれぞれの出身地に還元する吉村 昇 学長東北公益文科大学C A S E3

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