カレッジマネジメント199号
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45職員育成の強化、SDの義務化には大きな異論はなく一致した。職員の育成がなかなか進まない点は『日本経済新聞』7月2日付記事「大学職員研修進まず―全員参加6・6%どまり」の文科省調査結果でも明白で、3割を超える大学で半数以上が研修に参加せず、内容も業務上の基礎知識の習得が約60%と多く、特に今求められている中長期計画の立案や推進など「戦略的企画能力」の育成は約23%と少ない。これを飛躍的に強化しなければならないことは委員の共通認識であった。最も議論になったのは専門的職員である。後に示す文科省の全国調査でも、まだ多くの大学が端緒的な取り組みで、専門的職員の定義や育成方法、役割については確立途上にあり、引き続き環境整備に努める結論となった。この間の答申等では、リサーチアドミニストレーター(URA)、IRerなど多くの専門職が例示されてきた。当初の提起が「高度専門職」だったこともあって、ここから、大学職員の専門職化とは、教育研究に関する特定分野の専門家を指し、それはドクターを出た高度な知識を持った者で、それをどういう資格や処遇で外部から採用し、また大学間で異動させるかという議論が主流になっていた。しかし、現実には外部人材だけで教育研究の質向上はできず、今いる職員を如何に専門職に育てるか、また専門的職員は教育研究の特定分野だけではない。この在り方については、まだ委員の中で一致を見たとは言えない。私が最も重要だと思ったのは「事務を処理するために専任職員を置く」という大学設置基準第41条の改訂である。これについては繰り返し中教審で発言した。反対する意見はなかったが、その必要性についての認識や切迫感には温度差があるように感じた。自らの41年間の職員生活の中で、職員提案が相手にされなかった苦闘の日々は恐らく体験した者でないと分からない。職員をどう位置付け、大学組織のどこに参画させ、運営にいかなる権限職員の資質・能力の向上専門的職員の配置職員の位置付けと役割を持たせるか、ここが決定的な問題である。いくらSDが義務化され力をつけても、それを発揮する場所が無ければ宝の持ち腐れ、何の役にも立たない。力量の形成とそれを発揮するポジションの確立、この2つはセットである。これについての私の意見や提案は最後の取りまとめも含めかなり取り入れて頂いた。直ちに設置基準41条の改訂には至らなかったが、職員の位置を明確に示し、改訂の方向性が提示された点で画期的なものだと思っている。文科省は、2015年、専門的職員の配置状況に関わる初めての本格的な全国調査を行った。図2で示した結果から読み取れるように、現在、専門職として配置されているのは、以前からあった図書館での司書資格、学生の健康管理分野での保健師や看護師、施設管理分野での建築・施設関連資格、情報管理分野でのIT資格、新しい所では就職支援でのキャリアカウンセラー資格が上げられるくらいである。ただし、これから必要な分野となるとIR分野、つまりデータを分析し課題を見つけ政策提案のベースを作り得る人材や「執行部判断に対する総合的な補佐」、トップを支える人材など、特定分野の専門家というよりは必要な政策立案や改革の推進を担える力を持った総合力のある人材が求められていることが分かる。こうしたことから、求められるのは、特定分野の教育・研究支援を担う専門職人材とともに、トップを補佐しつつ大学全体の政策を企画し目的達成に向けて組織し調整できる高度なゼネラリスト、大学の現状や問題点を熟知し、解決策を提案・実行できる人材が求められていることが分かる。調査結果から読み取れるこの専門職の2つの特性は、それ以前の職員のあるべき姿をめぐる調査研究でも明らか大学職員の専門職化とは何か専門職員に関する文科省の全国調査専門的職員には2つの特性リクルート カレッジマネジメント199 / Jul. - Aug. 2016

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