カレッジマネジメント199号
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48リクルート カレッジマネジメント199 / Jul. - Aug. 2016設定してチャレンジしそれを評価し励ます取り組みは効果が大きい。中期計画等で実際に求められている課題をブレークダウンすることで改革方針も浸透し、また多くの職員が現実の改革課題を担いチャレンジすることで経営・教学改善も進み、かつ成長にもつながる。管理者昇格制度または専門職への昇任を如何に行うかも重要な育成の機会である。年功序列を改め、あるべき管理者像を示し考課制度でチェック、論文や業務提案、面接等ふさわしい昇格試験を行うなど意図的に昇格を教育システムとして活用することが求められる。そして、全ての人事・業務・運営・組織を育成型にする、この視点で業務運営と組織を見直すことも重要である。求める人材像を明確にした採用から成長を意識した配置・異動・任命等様々な育成のチャンスがあり、プロジェクトやワーキンググループ等も横断的な育成機会となる。組織も硬い縦割りから改変し、会議の持ち方や業務改善、提案制度やプレゼン体験、表彰制度等、様々な工夫で思わぬ効果が得られる。この点では、『大学職員は変わる』(上杉道世著)にある、東京大学での事務局改革のトータルプランの取組みが参考になる。そして積極的に外部研修に派遣し、大学院入学等の専門機関での学習を支援し評価する。私大は基本他大学異動がなく、外部で学ぶことは大きな刺激であり、また他流試合、人脈形成、情報交換など成長のチャンスでもある。大学院に進学する職員は増えてはいるがまだ7.4%。専門的・体系的に学ぶまたとない機会である。そしてその全ての基本にOJD(オンザジョブ・ディベロップメント)、開発行動を通じた育成、即ち自らの業務の中で改革を企画提案し実践し、成果を上げること。自分の頭で解決策を考え実行管理し結果を出す、これを育成システムに組み込むこと、最後はこれしかない。これが現実を変える本物の力となる。そしてそれらの基礎には、図4に示した3つの領域の基礎・専門知識がある。最後に強調したいのは、職員の運営参画である。私高研調査によると職員が提案、発言する風土や運営がないとする大学は約半数(47%)に上る。職員は、大学運営や教学方役割を高め、運営に参画する針に口を出すべき職務ではない、教育のことは教員が決めるという根強い意識がある。前掲の設置基準第41条の事務処理規程、これが教授会自治、教員統治の伝統と相まって職員の大学運営参画を押し止めてきた。今回の中教審の審議の結論「現行の事務組織は大学設置基準上単に事務を処理することが目的とされている等、事務組織及び事務職員に対する期待の高まりやその役割の重要性等に必ずしも対応するものとなっていない。事務組織及び事務職員がこれまで以上に積極的な役割を担い、大学運営の一翼を担う機能をより一層発揮できるようさらに検討を深め、その結果を法令等に反映させる」は非常に重要かつ意義がある。今回の提起が、国公私大約10万人の現職職員(事務系)の役割の拡大と成長を後押しし、経営参加、大学運営参画の飛躍的前進につながることを期待したい。全国の大学職員は是非この方針に着目し、またその積極面を生かして積年の改革課題にチャレンジして頂きたい。大学に再び訪れる厳しい時代を見据えると、職員の力量とその役割の飛躍的向上こそが大学の生存と進化にとって必須の条件だと言える。図4 SD・職員の力量向上のトータルシステム【目的】大学目標の達成・教育研究の質向上【基本】中期目標に基づくチャレンジ(開発行動)自大学の戦略・組織運営・財政・教学の基礎知識分掌業務の深い専門知識・資格・学位・経験大学業務の基礎・大学法制度・高等教育行政等の知識外部研修派遣重視、大学院入学積極支援全ての人事・業務・運営・組織を育成型に管理者(専門職)昇格制度の改革で育成目標管理(チャレンジ)制度で主体的取組強化育成型人事考課(評価)制度の構築・改善学内研修制度の充実・体系化・資源投下分掌業務の目標達成行動を通じての育成(OJD)

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