カレッジマネジメント199号
66/70

の重要な役目なのだ。「地域連携への具体的な動きはもちろん、学内の意識付けや認知向上も行います」との言葉通り、センターが設置されたことで、それまで自主的な学科・教授・ゼミ単位でしか地域と繋がっていなかったところに、学内での横串が通り、複数の学科の掛け合わせで地域連携するプロジェクトが出始めた。とはいえ本格的な取り組みはこれからだという。学部学科や地域等、複数のリソースを客観的な目線で有機的に繋ぎ、立体的な連携事業を多く創出することが目標だ。拠点となる2号館は3階建てで、ガラスを多用し採光率の高い造り。1階には地域連携センター事務室、学生の健康を管理する「保健センター」、理学療法学科の実習に使われる「水治療実習室」、30人収容可能な「コミュニティスタジオ」、学生用のフリースペース「アクティブラウンジ」があり、2階にはセミナーサイズの講義室「アカンサススタジオ」と、3階にまたがって「アカンサスホール」が配置されている。学生の学び支援のための施設設備が整い、地域連携・健康長寿・異世代交流等をテーマに、学内外のコミュニケーションスペースとして活用されることが期待されている。取材時もラウンジでは学生が多く自習に励んでいる姿が見られた。保健センターも毎日気軽な雰囲気で学生が相談に訪れ、コンディションを整えていくという。駐車場に隣接し、広いキャンパスにあって学外からのアクセスも良い。地域の大学が地域活性にどう関わるかは、言うまでもなく大学にも地域にとっても重要課題である。動き始めた地域連携の核として、センターがその機能を最大化していくことを期待したい。(本誌 鹿島 梓)徳島文理大学は、1895年村崎サイが「女性の自立」をうたい設立した私立裁縫専修学校を母体とし、短大化、女子大設置、共学化を経て、今や9学部を展開する総合大学である。地域連携センター(以下センター)は、120周年事業の一環として2015年にオープンした2号館1階に設置された。背景には国が重点強化した地方創生政策の一つ、COC+事業への採択があったという。COC+は大学単位ではなく、自治体・中小企業・地域の他大学との連携プロジェクトに対して助成する事業である。徳島県の場合、参加大学全体による県内の人材育成を基軸とした「とくしま元気印イノベーション人材育成プログラム」が認定されている。最終的には地域への雇用創出を想定した仕組み作りを行っているが、「まず大事なのは自立した学生を地域全体で育成すること」と、夛田羅勝義センター長は語る。建学以来の「自立協同」を実践する学生を地域で育てるべく、まずは学生が自分の身近な問題として地域を捉えるためのきっかけ作りを多く提供する。センターはあらゆる利害関係の調整・ハブ役となり、適した配役を差配し、プロジェクト全体の効果を最大化する。例えば全学部1年次必修の「地域学」では、四国の歴史・文化・経済に大きく関係する「四国遍路」について、座学と実践を通じて学ぶほか、県知事に県政を学ぶ回、地元新聞社の講演の回等、地元に根差した授業設計と各所調整を行っている。「自立協同」の「自立」とは「他に依存せず自ら立つ」ことであり、「協同」とは「力や心を合わせて事に当たる」ことである。地域を通じてその両スタンスを身につける教育を設計することが、センター68リクルート カレッジマネジメント199 / Jul. - Aug. 20162・3階にまたがる450名収容可能な「アカンサスホール」。音響効果に優れ、講義や講演会のほか、コンサート・演劇も開催される。優れた文化人でもあった村崎凡人前理事長が愛好した音楽に関する学部・施設を有するのも、徳島文理大学の特徴。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 66

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です