カレッジマネジメント200号
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12リクルート カレッジマネジメント200 / Sep. - Oct. 2016あります。本学では、AP事業に関連して、成績ファイルを作るという研究が始まっています。例えば金融機関がどういう人材を求めているのかを調査すると、色々な能力が提示されます。それに対してこの学生は4年間でどの能力を身につけたのかを示す推薦ファイルのような仕組みを作りたいと考えています。それをデータベース化し、例えば公務員を受けることになれば、同じ書類の中でも公務員用の証明書を作成する。大学として一つの成果保証になるものを作る方向で検討しています。今後の大学と学長の役割司会 国立大学プランの中でミッションの再定義や3つの重点施策が示されました。公立大学と存在意義が被る内容も見受けられます。国立大学・公立大学のこれからの役割とは何でしょうか。山崎 難しい課題だとは思いますが、国の財政問題や人口減少を考えると、2020年まで等の短期ではなく、長期で考えないといけません。その中で質の高いボリュームゾーンの人材を国立大学として育成していくことが大事な役割だと思っています。今後どう住み分けていくのかという問題と規模感の問題がありますが、今の86の国立大学を、地方都市が小さくなっていく中で本当に存続させることができるのかについては極めて疑問です。北陸3県を合わせても人口は300万人ぐらいしかいません。だからといって金沢大学やその他の大学が消えたら、都市は半分ぐらい消滅してしまいます。国立大学の機能をどのように残しながら、効率的に存続させるかという議論が、ようやく始まろうとしています。その場合に公立・私立大学とは競合していくのか、それとも共存するのかという大きな施策を、皆で考えていく必要があります。 もう一つ国立大学の大事な使命は、文理を問わず基礎的分野を守っていくことです。文系の哲学・宗教等をはじめ、基礎学問は国立大学だからこそやらないといけないものもあります。研究費や助成金が獲れる分野だけをやっていれば良いということではありません。近藤 地域にある公立大学は、基本として設置主体がどういう方針でこの大学を作ったのか、つまり、設置理念を意識することが必要です。また、公立大学の一番の応援団は市民の皆さんです。市民の皆さんに、地域社会の中でこの大学が本当に必要だとどのくらい思ってもらえるのかが極めて重要です。そのためには、地域にどういう形で、どれだけ参加していくかが問われます。教職員や学生も含めて大学が地域にとってどういう意味を持っているのか、常に思考し、行動していくことが必要でしょう。更に、今後は地域が抱える課題等を軸に、他大学との連携をますます深めていく必要もあると思います。司会 私立大学は全国に約600校あり、学生の8割が私大・短大に在籍しています。人口も減り、2015年度には43%の大学が定員割れという状況を考えた時に、これからの私立大学の役割とは何でしょうか。田中 やはり学生が偏差値だけではなく、この大学が自分に合っていると判断することが非常に大切です。この最初のマッチングをどうするのか。選ぶ側の高校生にとっては、実は私立大学の特徴がよくわからないことが最大の問題です。まずそれぞれの大学が自校の特色を明確に認識して打ち出す必要があると思います。例えば本学で2年間実施したブランディング調査では、それまで法政大学は何をやってきたのか、学生はどういう教育を受けて、どういう学生が卒業していったのかをまず検証するところから始めました。目新しいものを創るのではなく、まずは大学が持っているものを活かそうということです。その特色を様々な形で外に発信し、この大学のここに共感する、と判断してくれる高校世界に展開する大学を目指す一方で、地域に必要な人材を輩出する両責務を負うのが国立大学。(山崎)

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