カレッジマネジメント200号
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62リクルート カレッジマネジメント200 / Sep. - Oct. 2016り、望ましい高大接続の形を実現できるだけでなく、法人合併で、毎年200名ほどの学生が入学してくるのは経営上も大きなメリットであるし、建学の精神の理解力を持った学生が増えるのも望ましいことである。2015年春に平安高校の野球部が甲子園で優勝したが、龍谷大学付属として名前が出たことで、広報効果も高かったと学長はうれしそうに話した。関係校は多いが、こういうパターンが今後も増える可能性について尋ねてみたが、「法人合併に至るには様々な条件があって難しい」とのことであった。ブランディングと龍谷大学イメージの変化2012年9月からブランディング戦略にも力を入れてきた。パンフレッド等の色合いも一新、You Unlimitedというスローガンを掲げた。「龍大生のイメージが変わってきた」と学長は言う。まじめで誠実というイメージは変わらないが、明るく活発になった。自分を表現できる学生も増えた。京都市が企画しているボランティアのプロジェクトに応募するなど、積極的なイメージになった。キャンパスのいたるところに、You Unlimitedという旗が掲げられ、ガラス張りのラーニングコモンズ、1階のスターバックスやカフェスペースに座りきれないほどの学生があふれ出て、活気がある様子に触れて、4年前に訪問した時とキャンパスの印象ががらりと変わり、明るく開放的なイメージになっており、筆者も大変驚いた。様々な改革の効果こうした5年間の改革で、様々な効果が表れている。入学者数も増えたし、志願者が大きく伸びた(図表2)。志願者数は2010年に4万9447名だったが、2016年には6万4403名と1.3倍に伸びた。学部別の内訳も見ると、新しい学部・学科を設置したことの効果ももちろん大きいが、それ以外の学部の志願者も伸びている点も注目すべきだ。例えば、2016年の場合、文学部、経営学部、法学部、政策学部も前年度比10%以上の伸びを見せた。「勉強意欲のある学生が増えて、講義をしていて感触が良い」と話す教員も多く、様々な取り組みの成果が表れつつあるという。そうした教育効果は、いくつかのエビデンスにも表れている。例えば、図書館の利用率である。深草キャンパスの場合、学生の図書館利用者数は9万7511名の増加(2011年度:75万6746名→2015年度:85万4257名)、貸出冊数も2015年度は2011年度に比べ、5万6939冊の増加となった(2011年度:19万891冊→2015年度:24万7830冊)。「本を持って学内を歩いている学生らしい姿が増えてきた」と学長も話す。また、深草キャンパスコモンズ及び瀬田キャンパスコモンズの合計利用延べ人数は、16万292名で、月平均では1万3358名と非常に多くの学生に利用されている。また、グローバルスタディーズ学科では、非常によく勉強させているが、一例として、グローバルスタディーズ学科の学生のTOEIC®テストのスコアの伸びを紹介してもらった。15人程度の少人数クラスで週8回~10回の徹底した英語運用能力を高める教育を行い、入学時は438点だった平均スコアが、10カ月で174点上昇し、610点を突破した。また、当学科では、TOEIC®テスト730点を卒業要件としている。卒業時の目標ではなく、卒業要件としている点に意気込みを感じるが、この要件をクリアした学生も入学後10カ月で17名となった。卒業時の進路決定率も毎年、上昇を続けている。2011年度には93.3%であったが、2015年度には96.5%になった。また、2012年からは新たな「課外活動支援方式」を展開し、その効果もあり、課外活動での活躍も目立ってきた。伝統的には野球部が強かったが、女子バレー、バドミントン、女子柔道、ボート等、関西でもトップレベルの成績を収めている。なぜ急激に変わってきたのかなぜ龍谷大学はこれほど急激に変わってきたのか。「構成員の共有意識と施策実行力。そして、実行してみて手ごたえを感じるようになり、大学づくりに参加している意識も芽生えているからではないか」「以前に比べると全体を見図表2 大学・短大の志願者数0100002010201120122013201420152016(人)(年)200003000040000500006000070000

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