カレッジマネジメント200号
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66リクルート カレッジマネジメント200 / Sep. - Oct. 2016では、ブランドを支える肝心の中身はどうなっているのだろうか。國學院は、5年ごとに策定される中期計画に基づいて多彩な活動を展開している。中期計画である「21世紀研究教育計画」の策定を開始したのは2002年のこと。創立130年に当たる2012年には「21世紀研究教育計画(第3次)」を策定・公表し、現在は、PDCAに基づいて修正した第3次修訂版が運用されている。今年(2016年)はその最終年度に当たる。現在、実施状況の検証を行いつつ、来年度からの第4次計画の策定を進めているところだという。第4次計画は来年4月に公表される予定だ。第1次から第3次に至る中で、中期計画自体変化してきたと赤井学長は述べる。第1次計画は個別事業的な計画を寄り集めたもので、体系的に組み立てられたものではなかった。第2次計画は、ミッション(使命)とアクション(行動計画)で構成したものの、計画立案とそれを実行に移す現場との間に乖離があった。ミッションとアクションとの間に距離があったというわけだ。そこで第3次計画では、ミッションとアクションの間に「ビジョン」を入れ、両者をつなげるように配慮したと赤井学長は説明する。図表1が示すように、第3次計画は「建学の精神」から始まり、ミッション・ビジョンを経て、具体的なアクションに落とし込む構造となっている。このうちミッションとして提示されているのが「3つの慮おもい」だ。「伝統と創造」「個性と共生」「地域性と国際性」のそれぞれの調和を意図している。あえて「慮」の字を用いているのは、神道精神に基づいて、「相手の立場を慮おもんぱかりつつ自己主張を行い、協調を図る」という意味を込めたものだ。そして、「國學院ブランド」の確立と強化を目指すビジョンをアクションに変換するための視点が、教育・研究・人材育成・国際交流・施設設備における「5つの基もとい」だ。「慮い」を支えるのが「基い」だと学長は説明する。ただ、こうして整理して提示しても、現場の教職員が「21世紀研究教育計画」を理解し、実行に移していけなければ意味がない。実行しやすい施策を示すことはリーダーの責任であり、課題をどう実行するか常に腐心していると赤井学長は述べる。そのために、計画内容を解説する機会を意識的に設けているという。可視化して分かりやすく、同じことを何度も、教職員だけでなく父母や学生にも説明するのだそうだ。もちろん、学部長や学科代表との懇談の機会も重視する。学部の独自性を尊重しつつ、時にざっくばらんに、時にオフィシャルに話す場を持つという。こうして学内外に幅広く理解を得る努力を続けながら、単年度ごとに事業計画・事業報告を進めていく。単年度の取り組みが5年分蓄積した結果が、中期目標・中期計画で謳った内容と重なることが理想だ。しかし、現実はそれほどたやすくない。年度計画と中期計画とのリンクが目に見えて根付き始めたのはここ数年のことだと赤井学長は述べる。組織として理解が定着するには10年かかるというのが学長の実感だ。國學院が育成する人材像こうした地道な取り組みは徐々に実を結び始めている。國學院は近年、2万人強の志願者を安定的に集めることに成功している。もちろん、ただ数を集めることが全てではない。國學院には志向性の強い学生、つまり國學院のこの学部・学科で学びたいと志望して入学してくる学生が多いと赤井学長は述べる。確かに、歴史や文学はすぐ役立つ学問とは言えない。しかし、すぐに役立つ知識はすぐに役に立たなくなるとも言えるのだ。だからこそ、それらを学びたくて入学してくる学生は「國學院らしさ」や教育の中身を支持してくれているのではないか。学長はそう見ている。そもそも、國學院が育んできた学問は、神道・国史を中心に約150万点の蔵書を誇る図書館や、考古学・神道・校史資料を展示する博物館において可視化されている。130年の歴史の中で何をしてきたのか、具体的に見せることができると渋谷キャンパスに設置されている博物館

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