カレッジマネジメント201号
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43リクルート カレッジマネジメント201 / Nov. - Dec. 2016(杉本和弘 東北大学高度教養教育・学生支援機構教授)ポリシーを策定するよう依頼され、次のような具体的なルールが示されている。すなわち、①学生を主語とする、②文末には行為動詞を用いる、③一文に複数の行為動詞を混ぜないことが望ましい、④文末の行為動詞は、「習得する」「身につける」といった未来形ではなく、「習得している」「身につけている」というように、卒業段階で達成された状況を示す言葉で記載する、といった具合だ。CPの作成についても、「DPに基づき、DPで挙げている項目を身につけるために、『**学』を学ぶ、『**』履修モデルを選ぶ、『**』コースを選択する、『**』プログラムを準備している、としてください」というように具体的指示が出されている。こうして、全学の3ポリシーを各学科に落とし込むとどういった形で表現できるのかを、全学と学科のポリシーを対照させたリストで整理する作業が進められた。各学科から出されたものについて、カリキュラム改革委員会が全学DPを矛盾しないかチェックし、学科と意見交換しながら改善を行ってきたと学長は説明する。授業評価を活用してDP達成度を検証といっても、これでもう問題がないというわけではない。DP達成のための取り組みを拡充する必要があると西本学長は述べる。西本学長は、学長就任早々の今年4月、従来のカリキュラム改革委員会を廃止し、学長主導の「教育改革推進会議」を立ち上げた。カリキュラム・教育組織及び支援体制等、教育改革に必要なあらゆる事項を議論する場だ。この会議で、DPを達成していくための具体的な取り組みとして、例えば「初年次ゼミ」の全学導入、さらにできれば、4年間を貫く少人数ゼミの導入可能性も検討していきたいと学長は意気込む。さらに、DPを絶えず見直すためにDP達成度の検証を行うべく、カリキュラムチェックリストを作成して、DPと各科目の到達目標とを対照的に「見える化」させている。全学DPで規定する4つの力のどれを育成しようとしているのか、その相関を◎や○で示すものだ。さらに、各授業科目には学科DPに基づく到達目標があらかじめ設定されている。こうすることで、全学DP─学科DP─授業科目が一つの線で結ばれる。この推進を支えているのが、毎学期行われる授業評価アンケートだ。武蔵野大ではこれまで、個々の教員に結果を戻し、それに対する感想を出してもらう等、教員の改善努力に委ねるだけであった。しかし、授業一つひとつの実践を通して学生の成長が促され、それが最終的にDPの達成につながると考えなければ、DPはレトリックに終わる。そこで武蔵野大では、IR機能を担う教育改革推進室が中心となり、全学DPの4つの力に対応した形の授業評価アンケートを実施した。学生達の成長実感の把握を通して、大学が目指すDPの達成度が定量的に検証できるものにしたのである。教員は、自分の授業がDPとどう関係し、その達成にどう貢献しているのか常に確認することが可能だ。それだけではない。各学科でFD研修として、各授業の到達目標がDPに照らし合わせてどれほど達成できているか、授業評価アンケートの結果について議論してもらう場とする取り組みを今年度から始めた。関連データは前述の教育改革推進室から提供される。まずは、昨年度3・4学期の結果について全学科単位でFDの議論を行ったという。これにより、現場の授業評価の結果に基づいて改善を進めていくサイクルが少しずつ回り始めたと学長は感じている。今後は、春と秋に学科ごとにFD研修を実施し、取り組みの事例共有やGood Practiceを全学で共有する予定だ。実際に作業を進めるのは大変だが、DPを検証するPDCAサイクルがうまく循環していくことに西本学長は期待をかける。今後の課題は、卒業・修了時点でのDPの達成度の検証だ。国家試験がある資格系学部はよいが、それ以外でどのようにDP達成を測るか。一つの可能性として、少なくとも必修科目を中心に、卒業試験を実施するということも考えられる。もちろん容易ではないが、教育改革推進会議を通して検討していければと学長は語る。こうした学修成果の可視化は、規模や分野を問わず、日本の大学にとっての共通課題である。この20年、果敢な挑戦を続けてきた武蔵野大だ。新たな挑戦を見せてくれることを期待したい。つのポリシーの具現化特集

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