カレッジマネジメント201号
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56リクルート カレッジマネジメント201 / Nov. - Dec. 2016という、日本の大学では一般的なもの。しかしこの教育システムは、学部から大学院へのカリキュラムの連続性が十分でなく、材料系(金属、無機、有機に大きく分かれる)を例に取ると、金属専攻の学生が無機や有機を学ぶ機会が少ないという弱点もあった。「金属が専門だから無機のことは全然知りません、というのでは『材料屋』ではない」と三島学長は言う。「○○屋」は○○学のプロであるという自負を含む理工学者の物言いで、「材料屋ではない」というのは、非常に否定的な評価なのだ。「学部では、材料系なら材料系という大くくりで基礎を教えるということが一つです。大くくりの中の基礎は全部やって、3年生ぐらいで金属なり無機なりに行く、さらに大学院に進めばより細かく専門を選択していく、というカリキュラムの考え方をとりました」最終的に、従来の3学部23学科、大学院6研究科45専攻が、学部大学院をつなげて6学院19系にまとめられた。「将来の自分の活躍する場所を考え、自分の専門はもちろん、人間力とか教養とか、語学とか、自分が将来やっていくために必要だと思うものを、自分から取りにいく大学にするというのが東工大の目標です。それがイコール、キャリア教育ですよね」(三島学長)。もう一つ、三島学長がこの「教育改革」に期待するのが「研究改革」への好影響だ。「学士課程の初期段階に目的意識を持って基礎を勉強すると、卒業研究時点の学生の意識と能力、知識、取り組む姿勢は、今までより格段に上象徴的な科目が学士課程1年目の必修科目「東工大立志プロジェクト」だ。様々な分野の第一人者の講演を、1学年約1100人全員が講堂で聞き、それを素材に30人ほどのグループに分かれてディスカッションを行う。「理工系の学生に今最も必要とされているリベラルアーツ」として、専門外のトピックに対して、人の考えを聞き、自分の意見を説明する力を身につけるのが目的だ。このような少人数でのディスカッションスタイルのリベラルアーツ科目は、博士後期課程までずっと選択必修で置いてある。改革の実践には、「大学全体の教員の意識として、同じような考え方をして教える」ことが重要と三島学長は言う。「ですから、大学全体としてそういう雰囲気を作るための工夫をしてきました」。全学・全教員の雰囲気づくり、より具体的に言うなら教員支援のシステムの一つとして、教育革新センターを2015年の4月に開設した。がるだろうと。それにより大学の研究レベルも上がりますよね」(三島学長)。改革に伴い、ナンバリング制度も導入された。各科目に、100番台から300番台は学士課程、400番台から修士課程、Ph.D.を取る博士後期課程が600番台と番号が付されて、達成度に応じて番号を追って履修していく。早期卒業のためよりも、例えば早く進んだ1年分で海外に行く等、自分のしたいことにチャレンジできるという狙いだ。「彼らのそういう気概をどこまで高められるかが大学としての勝負」と三島学長は言う。これもまた「気概」を高めるためのシステムというわけだ。リベラルアーツ教育を強化今回の改革でもう一つ重要なのは、リベラルアーツの強化だ。東工大は理工系のみの大学でありながら、人文社会系の教養教育を充実させてきた。その長い伝統を継ぎ、リベラルアーツ研究教育院を設立した。リーダーシップアドバンス教養先端科目リアアアアアアピアレビュー実践レレレレ教教教教教教教養東工大立志プロジェクト教養卒論リーダーシップ道場学生プロデュース科目学士課程1年目100番台300番台ファシリテーションピアレビュー400番台600番台学士課程3年目修士課程1年目《教養教育の骨格をなす2年ごとの教養コア学修》博士後期課程「ピアレビュー実践」と「リーダーシップアドバンス」でリーダーシップを育成グループワークによる研究と発表を通じて、最先端の研究や高度な教養を共有教養教育で学んだことをいかに自分のビジョンに活かすかをまとめる4年間の教養教育を自らの志を立てるプロジェクトと促える※科目名や内容は変更になる可能性があります。リベラルアーツ研究教育院による「大きな志を育てる」教養教育

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