カレッジマネジメント201号
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62大学は社会とどう関わるべきか。この問いに対する答えは、個々の大学の状況、学問分野の特性、個人の価値観等によって多様であり、共通の理解を得ることは容易ではない。改革の名の下に展開されてきた様々な取り組みにも拘らず、大学に向けられる社会の視線は厳しさを増すばかりである。公財政支出の抑制が続く中、教員補充人事の一定期間凍結を余儀なくされる国立大学もある。私立大学についても、経常的経費に対する補助金の割合が、2015年度に1割を下回ったことが報じられている。このような閉塞的ともいえる状況において、社会・経済的環境を与件とし、それにどう対処するかという受け身のスタンスをとり続ける限り、大学に対する理解や支持は広がらないだろう。一方で、現代社会が直面する諸課題はいずれも複雑で、難易度が一層高まる傾向にある。解決のためには、確かな知識・スキル、正確な情報、公平な立場などが強く求められる。大学こそそれを担うに相応しい機関であり、社会的課題の解決に組織的・能動的に関わることで、より明確に存在価値を示すことができるのではないかと考える。社会に解決すべき問題があるということは、ニーズがあるということであり、企業に喩えるならば成長機会があるということである。「大学を取り巻く環境は厳しさを増しつつある」という常套句で、危機意識を持たせ、改革を促すことも一つの方法だが、環境を与件とせず、環境に働きかけることで社会の期待に応えることこそ、大学の持続可能性を高めるための確かな道筋ではなかろうか。大学改革の必要性が広く認識されるようになったのは1991年の大学設置基準の大綱化以降といわれている。そこから既に四半世紀が経過しようとしている。本稿では、最新データが得られる2015年から5年間隔で1995年まで遡り、この20年間における変化を政府統計等で振り返る。そのことを通して現代社会が直面する諸課題と大学の役割について考えてみたい。人口減少と急速に進む少子高齢化表1は、本稿で取り上げる統計データのうち主なものを課題別に色分けして一覧にしたものである。最初に大学関係のデータを確認すると、18歳人口はこの20年間で177万人から120万人と約3分の2まで減少しているが、進学率が37.6%から54.5%まで上昇したことで、学部入学者数は57万人から62万人に増加している。ただ、近年、進学率は頭打ち傾向にあり、18歳人口減がそのまま学部入学者数の減少に繋がる可能性は高い。さらに、今から15年後の2031年には100万人を切ることが確実である。年平均1万人を超えるペースで18歳人口が減少することになる。次は人口である。日本の総人口は1995年の1億2557万人から2015年の1億2711万人(いずれも10月1日時点)と若大学を強くする「大学経営改革」社会的課題の解決への積極的関与を通して大学の存在価値と持続可能性を高める吉武博通 筑波大学 ビジネスサイエンス系教授リクルート カレッジマネジメント201 / Nov. - Dec. 201667「受け身」では大学への理解も支持も広がらない

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