カレッジマネジメント202号
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13リクルート カレッジマネジメント202 / Jan. - Feb. 2017休学や中退は、経済的要因だけでなく、様々な要因が複合的に影響して発生する。それだけに、そうした複合的な要因を全体的に捉えるとともに、個々の要因をひとつずつ解きほぐしていくことが必要である。これまでの分析結果から経済的理由による休学や中退の複雑な経路は図12のように表すことができる。図で赤線は経済的支援により休学あるいは中退に至ることを防ぎ、学業を継続・卒業するための経路も示している。例えば、経済的困窮による授業料未納などの問題は、授業料減免や延納・分納あるいは給付型奨学金や貸与型奨学金といった経済的支援によって、ある程度解決することが可能である。また、アルバイト過多についても、それが経済的必要性によるものであれば上記のような経済的支援策が有効である。しかし、アルバイトが面白くて学生生活の中心となっている場合や、いわゆるブラックバイト等でアルバイトを辞めることが困難になっている場合には、経済的支援によるよりもアルバイトそのものに原因があるので、学生へより積極的なアドバイスや介入が必要とされる。心理的圧迫についても同様に、それが経済的要因による学生生活の継続困難性が要因となっているのであれば経済的支援が有効であるが、そうでない場合にはメンタル面のケアが必要とされる。経済的要因による中退予防の処方箋6非正規雇用が多い。保護者からの学費や生活費の支援が少なく、その分アルバイトを多くせざるを得ないことが、中退さらには非正規雇用につながっていると見られる。中退者が必要とするのは心理相談・授業料免除・学習支援5中退者の卒業後の厳しい状況に対して、大学はどのような支援をすれば中退を防ぐことができるのであろうか。中退者が在学中に受けた支援と必要と思う支援を尋ねた。図11のように、中退前に受けた支援のうち、貸与奨学金(10.0%)と心理相談(6.9%)の割合が比較的高いものの、そのほかの支援の利用率は低い。一方、支援を得られたら中退しなかったと思われるもののうち、心理相談(31.6%)、授業料免除(21.6%)、学習支援(21.2%)、キャリア相談(17.2%)と給付奨学金(11.9%)への希望度は高いのに対して、貸与奨学金への希望度(5.3%)は低い。つまり、心理相談・授業料免除・学習等に関する支援のほうが必要とされている。経済的な支援に関しては、中退前に実際に大学から受けた支援が少ない中、貸与奨学金の利用率は比較的高いが、貸与奨学金よりも授業料減免や給付型奨学金のほうが必要とされていると言えよう。これは、中退者が必要と思う支援と実際には受けた支援の間にギャップが生じていることを意味している。以上の分析から、貸与奨学金は現在よく利用されているものの、支援策としては限界があることが明らかにされた。特に中退者を支援するためには、給付奨学金や授業料免除のような、一層充実した経済面での支援策が求められている。しかし、そうした経済的な支援だけではなく、学習支援や心理相談によるメンタル面でのケアもあわせて必要であることも、中退者の調査からは明らかにされている。経済的支援により救済可能 家計困窮家計急変 アルバイト過多在 学心理的圧迫 休 学 経済的困窮 学業不振 中 退特集 中退予防の処方箋図12 経済的要因による休学・中退に至る経路

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