カレッジマネジメント202号
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38リクルート カレッジマネジメント202 / Jan. - Feb. 2017を新たに設定し、ロジスティック回帰分析を行った結果である。これら3つについても企業特性によって異なる効果が見られるのではないかという淡い期待から試みた分析だが、選抜性という要素も追加したことで、興味深い叩き台が抽出されたように思う。詳しく紹介したい。ロジスティック回帰分析とは、「有無」といった「1」と「0」のカテゴリで示される目標変数に影響を与える要因が何かを特定化し、影響を与える要因については、その要因が加わることで目標変数が「1」になる確率がどれくらい高まるのかを検証する手法である。そして、この手法を用いて「勤務先の企業の面接はうまくやっている」を「1」、「うまくやっていない」を「0」とし、「1」となる確率を高める要因が何かを探った結果が、図表2になる。ここからは次の3点を指摘しておこう。第一に、「要件の数」に有意な効果を見ることはできない。元より要件の多寡には、自己選抜を制御するという影響力が見込まれる。「こんなにも色々要求されるのであれば、自分にはとても無理だ」「これぐらいの要件なら応募してみようか」と思い巡らす学生は少なくないだろう。しかしながら採用面接担当者からすれば、要件が多いと採用面接がうまくいき、少ないとうまくいかない(あるいは逆に、要件が多いと採用面接がうまくいかず、少ないとうまくいく)というわけでもないようだ。要件の数よりも、内容が大事だといったところだろうか。そして第二に、それを裏付けるかのように、「要件の見直し状況」にはプラスの効果が確認される。分析では、項目「人材要件の見直しがよく試みられている」への回答(4段階尺度)をそのまま得点化したものを用いたが、回答が1増すと、「勤務先企業の面接は『うまくやっているほう』だ」とする状況に1.42~1.92倍ほどなりやすくなるという結果が出ている。ただ、ここで同時に指摘されるのは、こうした効果が見られるのは、選抜性の面で恵まれているところに限られるということだ。技術系総合職の場合、プラスの効果を見ることができるのは、「選抜性・高」と「選抜性・中」の2つ。事務系総合職にいたっては、「選抜性・高」のみ。要件の見直しは大事だが、それは選抜が実質化している世界において、という話のようである。では、逆に選抜性の低いところで意味がある要因は何か。それが第三の点であり、分析からは、「既存社員に似たタイプへの注目」こそが、結果として納得がいく採用に結びついていることが読み取れる。分析に投入したのは、4段階尺度の項目「面接現場において、評価が高い学生は、既存社員に似たタイプであることが多い」への回答だが、回答が1上昇すれば、事務系で1.76倍、技術系では2.13倍、勤務先企業の採用面接は、うまくやっていると回答するようになる。図表2 自社面接結果評価の規定要因(「うまくやっている」=1、「うまくやっていない」=0としたロジスティック回帰分析)事務系総合職技術系総合職選抜・高選抜・中選抜・低選抜・高選抜・中選抜・低人材要件1つ人材要件2~3つ人材要件4つ以上要件見直し 1.42倍 1.70倍 1.92倍既存社員タイプ高評価 1.76倍 2.13倍注:選抜性については、勤務先の採用状況に関する回答を基準に区分している。具体的には、次の通り。高=「(筆記試験や適性試験、面接を1回でも受けた学生のうち)有能だと判断された一部の層」のみを採用中=「半分ぐらい」を採用低=「人材として難しいと判断された一部の層」を落とすことが中心の採用+「ほぼ全員」を受け入れる採用また、人材要件関連の変数は、「人材要件は設定していない」をベースにした3つのダミー変数である。

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