カレッジマネジメント202号
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右の図は、文部科学省学校基本調査2016年速報版に掲載されている、高等学校卒業者の進路状況である。大学、短大、専門学校の進学率が折れ線グラフで記されている。このグラフには、筆者が縦に2つの補助破線を入れている。一つが2010年3月、もう一つが2014年3月である。この2つの補助破線は大学進学率の下降に転じた年と、上昇に転じた年となっている。まず、2010年は、大学進学率が下降に転じた年である。いったい何があったのか。リーマンショックである。正確にはリーマンショックが起こったのは、2008年9月であるが、実質的に経済や家計に影響が及び、大学進学率が低下したのがその次の卒年である2010年である。高卒就職割合も2010年に一気に低下している。既に、2009年には、専門学校進学率が上昇に転じている。もう一つの補助破線は、2014年3月である。この年は、何があったのか。アベノミクスによる景気回復である。いや、デフレからの脱却は進んでいない、というご意見もあるとは思うが、2011年には8500円程度まで下がった日経平均株価は、2013年12月には2倍近い1万6000円まで上昇している。すると、大学進学率は再び上昇に転じ、一方専門学校進学率は低下に転じている。つまり、大学進学率が50%を超え、私立大学への進学者が8割近くに達している現在、大学進学率は家計の状況に大きく影響を受けているのである。その一方、専門学校は4年間私立大学に通うには厳しい家庭において、2年間で手に職あるいは資格を取得して社会に出ていくという、言わば“セーフティネット”の役割を果たしているのではないだろうか。これまで見てきたのは、高校卒業時の進学状況である。一方、大学や専門学校に入学した後の学生はどうなっているのだろうか。当然、家計の影響を受けているはずである。しかし、入学した後は退学(中途退学)の状況は明確でなく、さらにその背景にある理由について、外からは全くと言っていいほど見えてこない。文部科学省が力を入れている、大学ポートレートにもその項目は存在しない。そこで、今回の特集は、中途退学の裏側にある経済的な事情中心に、大学と専門学校の状況についてまとめた。情報が少ないなかでの特集ということで、タイトルにある「処方箋」まで至っていないが、今後の学生の経済的事情に目を向け、中退防止を考えるうえでの一助となれば幸甚である。(本誌編集長 小林 浩)特集─経済的視点から考える─中退予防の処方箋リクルート カレッジマネジメント202 / Jan. - Feb. 20174

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