カレッジマネジメント202号
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42リクルート カレッジマネジメント202 / Jan. - Feb. 2017実感することが改革の鍵なのだ。髙橋学長はここでも医学部の事例をもとに語る。「同じ頃に始まった『医療面接技術』で、似たようなことがありました。これは、診察をパターン化して、技術として細かく指導するものです。患者さんと目を合わせる、質問はイエスかノーかでなく幅広く答えられるオープンクエスチョンにする、具体的な言葉遣い、服装や髪形まで。評価も、できていれば2点、まあまあは1点、だめなら0点と、明確に数値化します」。ファストフードの店員のマニュアル対応と同じだ、医者がそれでいいのかと、批判や反発が多かったそうだ。「ところが実際にそれを教えてみたら、まず学生を安心して患者さんの前に連れて行けるようになった。つまり、患者さんに失礼でなく経験を積ませることができる。そうすると、マニュアルでも基礎がある程度身についているから、自分の形やカラーをそこに乗せていけるんです」。このような学生の成長を体感すると「いい方法かもしれない」という認識が広まり、定着したという。2017年度「創生学部」を新設2017年度に新潟大学が開設する新学部の名称は「創生学部」という。これは「地域創生」から「地域」を意図的に取り去ったというものではなく、「自分で自分を創生する」という意味だ。最大の特徴は、到達目標も学生自身が考える「到達目標創生型」の教育プログラム。「自律と創生」という理念を受けて、今まで以上に自律的な人材を育てていくのが開設の意図と髙橋学長は言う。「もう一つ、何で大学に入るのかよく分からない、文系か理系かも分からないという学生達の、受け皿的な役割も考えています。『自然科学系か人文社会系か』『白か黒か』ではなく、間のグレーという、今までは難しかった選択も可能になる」。学生定員はわずか65名。専任教員は、学内から半数、残りの半数を外部から公募した。「しみていく」ような改革を継続することが重要改革の進め方について髙橋学長は、「全部が一緒に変わっていくというのは無理」と言う。例えば創生学部では、「タイプ2教員」として、各学系から期限付きで教員を「派遣」させることになっている。専任の教員だけでは数が不足という理由もあるが、それだけではない。タイプ2の教員が派遣期間を終えて各学部に帰っていった時、「創生学部のこういう点を、こう取り入れたらどうか」というふうに、創生学部の取り組みがだんだん「しみていく」ことを期待しているのだ。学長自身が現場の教員達と直接話をすることもそうだ。「全局、17カ所ぐらいになりますが、学長になってからたぶん2まわりしています」。教育や経営について話すなかで、少しでも「学長の言うことはもっともだ」と思う教員が増えれば、「しみていく」ように変わっていくだろうと髙橋学長は言う。「大きい所帯なので、いきなり右に切る左に切るといっても、簡単には動きません。けれども、継続して舵を切り続けない限り、進みたい方向に変わってはいかない。一方で、教育というのは、非常に慎重にしないといけないものだとも思っています。失敗した時の犠牲者は学生だからです。大学の教員は実験や研究が仕事ですが、教育だけは、実験ではありませんから」。高等学校新潟大学社会・地域法学情報工学数学初等教育プログラム医学教育プログラム42の主専攻プログラム主専攻プログラムシラバス全学の学士課程教育を分かりやすく明示専門+汎用能力を身につける到達目標明示型の教育プログラムを提供ディプロマポリシーアドミッションポリシーカリキュラムポリシー到達目標(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)

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