カレッジマネジメント203号
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14リクルート カレッジマネジメント203 / Mar. - Apr. 2017どのように最小化するかが課題となる。また、リスクが顕在化したときの対処の仕方も問われることになる。組織の柔軟性を維持できなければグローバル化を生き残ることも難しくなるから、リスクに柔軟に対応できる人材が不可欠となる。保証すべき質とは何か─ 最重要事項は職業資格、学位の質保証「質」あるいは「質保証」という言葉は、今では頻繁に使われているが、国際的な通用性や透明性が重要テーマになっている状況を鑑みて、明確に定義しておく。製造業とサービス業では、それらの「質」を評価する視点に差がある。製造業では、一定の製品を大量に製造することによってコストダウンを図ることが重要であり、「欠点がなく画一的な」ことに重点がある。一方、サービス業では、欠点がないことに加えて、「顧客の満足」という視点が重要視される。顧客には、それぞれの個性があり、「多様性」「個別化」あるいは「個性化」が必然的に求められることになる。教育の質を評価するにも、学生=顧客と考えてサービス業と同じような観点が必要である。質保証の対象は、インプット、アクション、アウトプット及びアウトカムズに分類される(表2)。インプットやアクションは、社会から見れば、あくまでも学校が持っている潜在的な能力でしかない。アウトプットは数量的指標であるから分かり易いが、数字からだけでは、そこで育成される知識・能力等を理解するためには不十分であり、アウトカムズ(学修成果)の情報が不可欠である。高等教育においては、職業資格や学位が学生の習得した知識や能力の証明であるから、保証すべき最重要事項は、職業資格あるいは学位の質保証と言える(1)。高等教育の質保証とは、ステークホルダーに対して、学校が目指す目標に従って、教育が適切な環境下で、一定の水準とプロセスで行われ、成果をあげていることを証明・説明することである(表3)。質保証には、①卓越性(高い水準の質)、②関係者の満足度、③基準に対する適合性、④目的に対する適合性、⑤目標の達成度の5つの異なった視点がある。どのような高等教育の「質」が保証されるべきかという問題では、以下の3つのレベルが想定される。第一は、学校の設置認可時の遵守事項が守られていることであるが、設置認可事項が遵守されていることは最低条件であり、これだけで学校の質が保証されると考えることはできない。第二は、学校が設定している使命や目的が達成されていること、第三は、社会が期待している学修成果が認められることである。高等教育がユニバーサル段階に達して、多様化が進行しているなかで、全ての学対 象具体的内容インプット(投入)教育活動等を実施するために投入された財政的、人的、物的資源等をさす。アクション(活動)教育活動等を実施するためのプロセスをさす。計画に基づいてインプットを動員して特定のアウトプットを産み出すための行動や作業をさす。アウトプット(結果)インプットおよびアクションによって、学校(組織内)で生み出される結果をさす。一般的には数量的な結果を示すことが多い。アウトカムズ(成果)諸活動の対象者に対する効果や影響も含めた結果をさす。学生が達成した内容、最終的に身につけたもの(知識、技能、態度など)。表2 次元の異なる質保証対象表3 質保証とは一般的に、質保証とはステークホルダー(利害関係者)に対して、約束通りの財やサービスが提供されていることを証明・説明する行為をさす。高等教育の質保証の場合、ステークホルダーに対して、学校が目指す目標に基づいて、教育が適切な環境の下で、一定の水準とプロセスで実施され、成果をあげていることを証明・説明する行為をさす。

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